今、狩りに行きます
2013.06.19.Wednesday
不意に耳についた鎖の音に、椅子に座り画面を眺めていた青年― 清水は、その音がした方を一瞥した。
「ああ、ようやく戻って来たんだ。お前遅いよ、今度また遅れる様な事があったら、その陰鬱な顔蹴るからな」
「………」
清水が辛辣な言葉を投げ掛ける相手― デスは、その発言にも微動だにせず、ただじっと彼を見つめ返していた。
長い前髪と口元を覆う仮面の間から覗く頬には、殴られた様な真新しい痣があった。
しかし清水は別段気にかけるでもなく、そんな無反応な死神をつまらなく思ったのか、溜め息をつきながら結果の報告を要求する。
「で?ジョーカーは何て言ってた?」
「…“受けた恩位は返す。使うつもりなら、気が変わらない内に願い出ろ”…と」
普段無口なデスが、伝言とはいえここまで喋るのは珍しいことであった。
しかし清水にとっては興味がないらしく、その報告内容を聞いて苦笑を浮かべた。
「あぁ、そっか…それじゃ、ジョーカーも動かす手駒の一つに考えておかなきゃね」
果たして、自身の力量で彼女を扱いきれるのだろうか、という皮肉もあったのだろう。
そう言った彼の表情は、やはり何処か苦々しいものがあった。
すると、今まで黙って言葉に耳を傾けていたデスが、不意に一つの画面を指差した。
「ん、何か変わった事でも?」
言いながら、清水はデスが指差した方向の画面に顔を向けた。
その液晶が写し出していたのは、学園の生徒達と交流し合う、元回廊四人の姿だった。
四人の様子はいずれも、生徒達に敵対心等は無いようで、むしろ学園に馴染む雰囲気すら匂わせていた。
それを見た清水は、特別思い入れもない様子でさらりと言い放つ。
「ああ、要らない連中のことね。あいつらはその内処分しようと思ってたんだけど…」
「………」
「ま、その辺は始末係のお前に任せるさ。好きな時にあいつらの魂、狩ってきなよ」
ひらひらと手を振りながら、適当な指示を下す清水。
しかしデスは、返事をするでも頷くわけでもなく、ただ無言でその場に立ち尽くしていた。
そんな彼の様子にふと気付いた清水は、小馬鹿にした様に嗤う。
「あっはは!お前、本当に自分の意思ってやつがないよな!いいよ、分かった。好きなだけ、あいつら殺してきなよ」
「………」
その言葉を受け、デスはようやく小さく頷いて、返事の旨を顕にした。
大鎌を片手に踵を返すその死神に、清水は「そうそう」と思い出した様に付け足す。
「別に、あいつら四人の魂だけじゃなくていいからな。学園の人間でも誰でも構わない、とにかく勢力を削ってこい」
「……分かった…」
抑揚のない、ぼそりと呟く様な陰鬱な声だった。
生気を思わせない、緩慢な動きで歩みを進めるデスは、静かな足音を響かせながら薄暗い廊下へと消えて行った。
†Next…?†
* * * * * * *
という訳で、デスが動きだしました
ちなみにデスは指示がなければ動けない、他力本願な奴です。面倒くさっ!←
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