壱鬼とエグリマさんが会った場合

2013.06.19.Wednesday


* * * * * * *


「ふぁ……眠ィ…」


廊下を歩きながら大きいあくびをするのは、妖人科三年の生徒、壱鬼。


先程まで授業を受けていたのだが、先生の話は一切聞かずに爆睡していたらしい。

しかしそれでも寝たりない様子で、半開きの目を瞬かせながら廊下を歩いていた。



すると不意に、向こうの角からゆらりと青と赤の斑模様の生き物が姿を現す。

その生き物は廊下を歩いていた壱鬼を見つけると、愉しげな笑い声を上げて彼に近付いてきた。


「うおっ!?な、何だテメェ!?」


ぼんやりと歩いていた壱鬼はそれに気付くと、驚いた様子で目を見開く。

しかし青と赤の斑模様の生き物ことエグリマは、彼をにたにたとした表情で見据えた後、歪な笑みを口元に浮かべて言葉を発した。



「悪人面ヤロウ!!」

「…はぁ!?なんっ…何だとテメェ、この野郎!!」



唐突すぎる暴言に、鬼の彼は怒りを露にする。

だがエグリマは構わず、更に言葉を続けた。


「ツリ目、彼女イナイ歴イコール年齢!バーカ!!」

「うっせぇ!!テメェやんのかクラァ!!」

「バーカバーカ!!○貞!」

「なっ…!…ど、童○の何が悪いんだよ畜生ー!!」


暴露されたくない事をずけずけと言われ、開き直った様に反論する壱鬼。しかし涙目である。

ぎゃあぎゃあと廊下で騒ぎ立てる一人と一匹だが、一匹の方が次の言葉を吐き出した途端、一人の様子が一転した。











“人殺シ”


その言葉を聞いた瞬間、壱鬼の表情が変わった。

今までの怒り一点のみだったが、今やその色は消え失せ、代わりに驚愕と困惑、そして哀しみを交えた様な複雑な表情を浮かべていた。



刹那、彼は無言でエグリマに拳をつき出すと、普段以上の“気”を発して、大きい炎を上げた。

ごう、と音を立てて激しく燃え上がった炎は、目の前にいたエグリマを包む。


「ギヒャッ!?」


笑いと驚きが混じった悲鳴を上げ、エグリマは怯んだ様に後退った。

しかし壱鬼が今回発した炎は、相手の気を削ぐ方に特化した炎だったらしい。

全身燃えた筈のエグリマは、身体の一部が少々焼けた程度で斃れてはいなかった。


多少のダメージを負ったその生き物は慌てた様子で、しかしまた嘲り笑いながら何処かへ去って行った。




「……人殺し、か」


後に残された壱鬼は、忌々しげにそう呟く。

そして小さく舌打ちした後、彼もまたその場を立ち去った。

その背には、心なしか憂いの色が滲んでいた。



*END*


* * * * * * *

ギャグとシリアスが入り交じった感じになりました(´・ω・)←

壱鬼が本当に人を殺したかどうかはご想像にお任せします…(ぇ)

22:08|comment(0)

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