白沢とエグリマさんが会った場合

2013.06.19.Wednesday



* * * * * * *



「…何だありゃ」



教室から職員室へと向かう途中の白沢は、廊下で変な生き物を見かけて立ち止まった。

青と赤の斑模様で、人型をしているものの足は無い。

幽霊すら思わせるそのシルエットは、一見不気味な印象を与える。



しかし変な生き物が多いこの学園では、最早そんな生き物の一つや二つを見かけたところで驚く者は少ない。

しかし今回白沢が足を止めたのは、その斑模様の生物が初めて見かけるからであった。



(まあ、殺気とかはないから無害、か…?)



相手の気配を読み取り、白沢はその生き物が生徒に害を為すか否かを判断する。

するとその斑模様の生き物―エグリマは、廊下で立っていた白沢を見つけると、にたりと笑って彼の方に飛んで来た。



「お…」



何だ、殺意はないのにやりあう気か?と、白沢は応戦の体制をとろうとした時だった。

エグリマは楽しそうに笑ったまま、威勢よく言い放つ。





「独男ー!!」

「なっ…!?」



思わぬ先制口撃に、白沢は驚愕した表情でその斑模様の敵を見つめる。

しかし普段から言われ慣れているのか、彼は精神的にあまりダメージを負った様子はなく、以前闘志とほんの少しの怒りを交えた眼差しを向けた。

が、エグリマはおかまいなしに更に口撃を続ける。



「三十路独身男!!」

「それがどうした。今の世の中にゃわんさかいるぜ?」

「天パ!!」

「緩パーマと言え」

「デッカイ角ヤロウ!!」

「チャームポイントだ。良いだろ?」



口撃を淡々とあしらう白沢に、エグリマは一度口を閉じて彼をじっと見据えた。

伊達に教師を(ピーッ)年やっている訳ではない。白澤の妖人という助けもあってか、豊富な知識は様々な口撃の返しを蓄えていた。



しかしエグリマは、彼の心内にある最も言われたくない言葉を発見したらしい。

またにたりと嫌らしい笑みを浮かべると、今度は諭すような呆れたような口調でその言葉を口にした。





「アンタ、イツニナッタラ結婚スルノ?」

「!!そっ、その台詞は…!」

「モウソロソロ良イ歳ナンダカラ、身ヲ固メナサイ」

「や、止めろッ!!」



今まで余裕の色すらあった白沢の表情は一転し、途端に冷や汗を流しながらエグリマの言葉を制する。



―そう、エグリマが発するその口撃は、彼の母親の発言そのものであった。



「くそ、昨日また電話があったばっかなんだぞ!これ以上聞かされてたまるか!!」



昨日の母からの電話攻撃を引き摺っているのか、精神的に追い詰められた白沢は両手から靄状の気を発して、有無を言わずエグリマにとっかかる。

しかし斑模様のその生物は、彼の攻撃をひらりとかわすとまた言葉をつらつらと吐き出す。



「アンタ孫ノ顔モ見セナイツモリナノ?早ク結婚シテ親ヲ安心サセナサイヨ。アンタダッテ、将来部屋デ孤独死ナンテ嫌デショ?マタ見合イノ写真持ッテ来タカラ、今度家ニ戻ッテ来タ時選ビナサイネ。最低デモ一人トハ、チャントオ見合イスルンダヨ!」

「う、うわぁぁぁ止めろぉぉ!!!」



返事する隙すらないその饒舌な口撃に、白沢はとうとう耐えられなくなったらしい。

リアルに“orz”状態になる彼を見て、エグリマはようやく満足した様子だった。

「キヒャヒャヒャ」と楽しげに笑いながら、また新たな獲物を探して何処かへと飛んで行ってしまった。







「……畜生、アイツある意味厄介な敵だな…」



白沢は未だに“orz”の体制のまま、そうぽつりと呟いた。



*END*



* * * * * * *

白沢フルボッコ、見事なまでの完敗 笑

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