敵地を突き進む道中

2013.06.18.Tuesday


* * * * * *



引き摺りこんだ黒い悪夢の一人を先頭に、四人は仄暗い空間を歩んでいた。

その黒い悪夢は他の仲間と区別が付くように、先程竜彦が女装していたメイドのカチューシャを頭に付けられていた。

最初は彼?もそれを嫌がってすぐさま外そうとしたが、狐乃衛が「外すと爆発する呪いかけたから」の一言で、断念したらしい。

現在はもう馴染んだ様子で、そのカチューシャに手をつけようともしなかった。



勿論その言葉は嘘、完全なる出まかせだったのだが、その黒い悪夢はそれをあっさりと信用したらしい。

どうやら彼?も壱鬼と同様で、言われた言葉はすんなりと受け止める馬鹿正直な者のようである。

そうして案内は、先頭を歩くそのカチューシャ付きの黒い悪夢に任せており、後ろに続く四人は雑談しながらあとに続いていた。





「よっしゃ、外で特上カルビが俺達を待ってるぜ!さっさと敵倒して食いに行くぞー!!」

「待て壱鬼、誰がそんな高いの奢るって言った。お前らは最低額の食べ放題コースで十分だ」

「えー!?センセ、それはないって!折角俺達こうして身を挺して頑張ってんのにー!」

「それは俺も同じだろうが!」

「…コースだと、最低でも2〜3千円が妥当…それの×4だから…」

「いいや違うぞ竜彦」

「…?」



ぶつぶつと計算し始めた竜彦に、白沢が不意にそれを制止させた。

口角を僅かに吊り上げながら、彼は静かに言い放つ。



「俺が一言でも“全員奢ってやる”なんて言ったか…?」

「「「…!?」」」



その発言に、三人の間には衝撃が走った。

途端に冷や汗が流れる三人だったが、壱鬼がわななく声で彼にその言葉の真相を問うた。



「おい白沢…お前まさか…!?」

「お前呼びすんじゃねぇ、仮にも教師だぞ…まあ、お前らが予想した通りだ。一番活躍した奴だけ奢ってやる、後は自腹だ自腹」

「センセ…ひどいっ…!!」

「…先生、学生の財布の中身はいつもギリギリと知ってての発言ですか」



容赦ない白沢の言葉に狐乃衛、竜彦もそれぞれ文句を口にする。

しかし彼ら教師は、その意思を曲げるつもりはないらしい。

相変わらず嘲笑うかの様な表情で、絶望的な顔をする三人に告げる。



「まあせいぜい頑張れ?誰が一番敵を倒すかちゃんと見ててやっからな」

「くそっ…まんまと騙された…!!」

「って事は、俺らライバルって事だねー…」

「…手加減は無しだな」



一人暢気に煙草をふかす白沢を尻目に、三人の間にはじりじりと火花が散り始めていた。



そんな中、三人の間を何かの物体が一瞬通過して行った。



「…ん?」

「あ…」

「はぁ?」



飛んでった物体の方にそれぞれ目線を向けたが、それはとうに彼方まで吹っ飛び跡形なく消え去っていた後だった。



「…なんだったんだ、今の?」

「さあ…」

「何か俺、分かっちゃったかもー…」



見極められずに首を傾げる壱鬼と竜彦だったが、狐乃衛だけがその物体をかろうじで捉えらえたらしい。

そしてそんな事が出来る人物が、果たして誰がいるのかも予想がついたらしい。

一人にへ、と笑いながら優越に浸っていた。







しかし現状をふと思い出した壱鬼が、少し慌てた様に声を荒げた。



「そうだ、こうしちゃいられねぇ!早く敵見つけて倒さねーと!!」

「けど今、カチューシャ悪夢クン以外に誰もいないよ?」

「だったらこっちから呼べばいい話じゃねーか!!」

「ああ!なるほどっ」



壱鬼の言葉に、ぽんと手を打つ狐乃衛。

そして二人が同時に息を吸い込み、思い切り叫ぶ−







「「まっくろくろすけ出っておいでーーー!!!!!」」

「ぶはっ!?何言ってんだお前ら!?」



二人の叫びに、白沢が驚き思わずむせていた。



「…出っないと目っ玉をほっじく「竜彦、唯一の良心であるお前まで壊れないでくれ頼むから」



二人の傍らでぼそぼそと続きを歌おうとした竜彦を、白沢は真剣な様子で止めに入った。

すると先程叫んだ二人は、淡々とした口調で説明を始めた。



「いやだって、さっきこのカチューシャ悪夢クンから“君らのボスも真っ黒なの?”って聞いたら頷いてたからさ」

「こうして呼べば、ボスじゃなくとも敵も反応して出てくるだろうしよ!俺ら頭良い!」

「いいや馬鹿だ、絶対馬鹿だ。てかジ○リネタ止めろお前ら、似合わねぇから」

「…ちなみに俺は白い小ト○ロが好きです」

「いや誰もお前の好きな登場人物ってかキャラ訊いてないからな竜彦。つーかいい加減ジブ○から離れろお前らぁぁ!!」



広い空間に、今度は白沢の叫びがこだましていた。

果たして二人の呼びかけが敵や誰かに届いたのかは定かではない。





*Next…?*



* * * * * * *

“まっくろくろすけ〜”の台詞を言わせたかっただけです…orz

22:27|comment(0)

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