先輩危うし
2013.06.18.Tuesday
三人組が三条院先輩を襲撃ってか発見したようです(ぇ)
* * * * * *
「桃子センセー!怪我しちゃったからそのお胸で俺を癒してーっ!」
嬉々とした声色でそう叫びながら保健室に飛び込んできたのは、妖人科三年の狐乃衛だった。
しかしその女医の返事を聞く前に、もう一つの声が返事した。
「うっせぇなこのエロ狐!どう見ても先に治療すんのは俺の方だろーが、テメェは唾でもつけとけ!!」
同じ科の生徒、壱鬼が半ば苛立った様に狐乃衛に向けて怒鳴った。
すると言われた方も、軽く睨みつけながら負けじと言い返す。
「はぁ?何か言ったかなぁ壱鬼くーん…?何でも体力馬鹿のお前と一緒にすんな!!」
「あ"ぁ!?やんのかてめぇ!!」
「おーいつでも来いよ、相手してやっから」
「はいはい二人とも、此処で喧嘩はしちゃダメよぉ…?」
今にも取っ組み合いの喧嘩に発展しそうな二人を宥めたのはその場居合わせた保険医、桃子だった。
落ち着いた艶っぽいその声で、二人は渋々ながらも言い合いをそこで止めた。
そんな二人の様子を見守ると、桃子はにこりと婀娜っぽく微笑みながら訊ねる。
「そうそう、良い子ね。…ところであなた達、今日の…」
「はーい!俺今日は黒のボクサータイプ!」
「俺は“闘魂”トランクスだ!そして竜彦が…」
「「赤のふんどs「そんな訳あるかァァ!!!」
丁度タイミング良く現れた竜彦が、珍しく大声で二人の勝手な発言を制した。
保健室にずかずかと入ってきた彼は少々顔が赤く、照れた様子であった。
「今度また勝手な事言いふらしたら…覚悟しておけよ」
「はーい」
「何だよ竜彦、これくらいのことで怒んなって!」
睨みつけながら言う竜彦だが、二人は冗談ぽく笑いながら適当にあしらうだけだった。
そんな友人らの様子を見て、竜彦は諦めた様子で溜息を一つ付いた後、気を取り直して桃子先生に尋ねた。
「すみません、絆創膏を一枚頂けますか」
「ええ、そこの棚に入っているわ、持って行きなさい」
「ありがとうございます」
そうして竜彦が絆創膏のある棚に向かって行った時、一方で壱鬼の目にはある光景が飛び込んできた。
「!?ちょっ…!狐乃衛、見てみ!!クマだ、クマが寝てる!!」
「は!?クマ!?」
そう言って壱鬼が指指すのは、少し開いたカーテンの隙間から見える、三条院先輩の姿だった。
どうやらベッドで眠っているらしく、二人が覗いていても起きる気配はなかった。
それをいいことに、妖人の二人はカーテンで仕切ったその空間の中へとそろそろ入って行く。
「…クマだな」
「ああ、超クマだよな」
「めっちゃクマだな」
「ハイパークマだよな」
「何訳わからない話をしているんだお前達は…」
カーテン越しに聞こえたのか、竜彦が呆れた顔を覗きこませながら二人にツッコミを入れた。
しかし彼もベッドに眠る人物の姿をみた途端、目を丸くさせながら呟いた。
「…クマ、だな」
「だろん?竜彦クンも気になっちゃうだろ」
「つーかあれ…被りモンだよな…?」
「「!!」」
壱鬼のぼそりと放った一言に、二人ははっとした様子で彼を見た。
すると鬼の彼はにやりと口角を吊り上げる。
「素顔…気になるよな」
「壱鬼、まさか…」
「ちょ、やっちゃう?剥いじゃう!?」
「やるしかねーだろ、常識的に考えて…!!」
勝手に盛り上がってきている三人組だが、一方で標的となった三条院先輩は相変わらずすやすやと眠り続けていた。
「よーし、それじゃいくぞ…!」
「だが壱鬼…眠っている所を剥ぐのは少々手荒じゃないか?」
「うわ竜彦クンってば真面目だねー…」
「けど、それもそうだよな…よし、三分だけ待ってそれでも起きなかったら、剥ぐ!」
手をぐっと握り締めて決心した様子の壱鬼だったが、狐乃衛が何気なくその時間について訊ねた。
「…何故に三分なんだい?」
「ラ○ュタのム○カに倣ってみただけだ」
「だがあれは実際三分待っていないよな…」
「竜彦、それは言っちゃダメなお約束ってやつだぜ」
ラ○ュタトークに脱線しつつある三人組だが、それでも時間は確実に過ぎて行く。
じっと見つめる三人組と、強面(主に壱鬼)に囲まれた三条院先輩。
果たして彼が三分以内で眠りから覚めたのかどうかは―
定かではない。
*END…?*
* * * * * *
三条院先輩逃げて超逃げて
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