襲撃→捕獲開始
2013.06.23.Sunday
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旧校舎の屋根に、からんと下駄の音が響いた。
其処で寝ていた犬島千代松こと犬千代は、その履物の主の方を見た。
するとその主―温羅は片腕に兎耳の少女、にんじんを抱えたまま犬千代に声を掛けた。
「おう、起こしたか。相済まぬ」
「いえ…小生は構いませぬが」
犬千代は上体を少し起こしながら、温羅とにんじんの二人を伺いつつそう返事をした。
初対面ということで、まずは畏まった態度で接することにしたらしい。
するとその訝しさが微かに混じった眼に気付いたのか、温羅は「ああ」と言いながら最初に自己紹介した。
「儂は伝説科兼妖人科の温羅、此処の旧校舎の一室に住んでおってな。こっちは儂が面倒みているにんじん、因みに儂は“にん”と呼んでおる」
「これはご丁寧に。小生は十二科・干支クラスに所属、姓は犬島、名を千代松と申します。以後よしなに」
「いぬー?」
姓名の“犬”に反応したにんじんは、不思議そうな声を上げる。
それに対し犬千代は、幼子の問い掛けに少し表情を柔らかくして説明を加えた。
「左様、小生は十二支の精霊の“戌”で御座います。耳や尾、時には犬そのものの姿にもなりますぞ」
「わー…!」
その言葉に、にんじんの目は輝き好奇心に満ち溢れた表情へと変わる。
が、温羅が此処を訪れたのには何やら目的があったらしく、犬千代の言葉は耳に入らず一人遠くを見つめてぽつりと呟いていた。
「果たして彼奴等はどの様な味がするのかのう…」
「…え?」
温羅の不穏なその言葉に、犬千代は思わず反応した。
すると鬼のその彼は突如犬千代を見て、真剣な面持ちで訊ねた。
※食すことから離れない温羅に思わず口調が崩れたらしい犬千代さん。
温羅の目的―それは、外を飛び回る白と黒のコウモリの捕食だった。
「…それ以前に何故コウモリ達を食べようと?」
「いやなに、にんが窓から彼奴等を見つけてな。食料品も底を尽きかけておったし、丁度良いと思うてな」
「だ、だからってコウモリを食べるのは如何なものかと…!」
「いやいや、もしかすると中々に珍妙な味かもしれぬぞ?試す他は無いだろう」
(この人本気で言ってるみたいだな…)
本当にコウモリを捕らえて喰うつもりでいる鬼に、最早諦めを感じた犬千代。
思わず小さく溜息を吐くのだったが、そんな事を察せずににんじんは明るい声を上げた。
「わんわんっ!遊ぼー!」
「だ、だからそのわんわんと言うのは…」
「おう、丁度良い。にん、この者と遊んでおれ。儂は一寸コウモリを捕らえに行ってくるでな」
「え!?そんな勝手に」
「うん!おじちゃん、いってらっしゃーい!」
「御主、にんを頼むぞ」
「ちょ、待った…!!」
犬千代の返事もちゃんと聞かぬまま温羅は抱えていたにんじんを降ろすと、そのまま屋根から走り飛び降りて行ってしまった。
後に残された二人のうち、犬千代は唖然とした表情、にんじんはにこにこと無邪気に笑う表情という対照的なものであった。
その後温羅が、本当に白と黒のコウモリ捕らえて来たのかは定かではない。
*END*
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コウモリ達逃げて超逃げて←
けどまあ、温羅さんは見るからに重量型なので素早いコウモリとかは捕まえれないです笑
せめて弓があればなぁとか言いつつ、偶々近くにあった虫取り網を持って追っかけてるかと(ぇ)
…てか温羅はどんなサバイバル生活してんねん!Σ\(゚д゚`)
まともな収入も無いので森で狩りとかしてるかもしれません。あと川で釣りとか畑作って野菜自作とか。
うむ、完全に昔の人の生き方だな…!笑
そして犬千代さんに完全に迷惑しか掛けてない件←←
昼寝を起こした上発言で困らせた挙句、にんちゃんを預けるとかもう…どんだけフリーダム…!orz
犬千代さん本当すみません、温羅が帰ってきたら遠慮なくドロップキックをかますことを強くお奨め致します←
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