やけに死神がウザい話
2013.06.21.Friday
* * * * * * *
保健室のベッドで眠るソレイユ。
その傍らにいた男は―
外道―もとい死神、デスだった。
そんなはっちゃけた死神の様子を、訝しげな声でリジェクトが訊ねた。
「…そんな所で何してんのさ」
「いや、読者の期待に応えようと思って」
「訳分かんないこと言ってないで、さっさと消毒液もらって行くよ…あの保健医がいない内にね」
「おk」
デスはリジェクトの呼びかけにぐっと親指を立てて返事すると、のそのそとソレイユの傍から離れて行った。
そうして消毒液を貰いに来たらしい二人は、桃子先生がいないというのに勝手に保健室の棚を漁り始める。
すると突如保健室の扉がガラリと開き、二人はぎくりとした様子でそちらを見た。
其処にいたのは色気を放つ保険医―ではなく、仮面を外した紳士、ジェントルの姿であった。
一応挨拶として桃子先生に渡すつもりだったのだろうか、胸のポケットには一輪の薔薇が挿してある。
「おや、二人とも一体何をしているのだね?」
「なんだ、ジェントルか…驚かせやがって」
「あ、リジェクト今舌打ちした?したよね確実に」
「私の質問に答えないかね、君達…」
再びごそごそと棚を漁るリジェクトと彼女をからかうデスを見て、ジェントルは小さく溜息をついた。
するとリジェクトは、棚の探索をしながら彼に問いかける。
「そう言うそっちこそ、一体何しに来たのさ。もう回廊は抜けたんだろう?」
―学園祭の時に、魂を失ったジェントルは学園生徒達によって復帰したのである。
その際に保険医の桃子からその話を聞き、その恩を返すべく彼は回廊を抜けたのであった。
ジェントルは顎に手を充てながら、困った表情で話す。
「ああ、これからはこの学園の為、恩人の為に尽くそうと思ったのだがね…それがあの保健医のレディ、誰が私の魂を救ってくれたのか教えてくれないのだよ」
手がかりだけでもと頼むのだが「それは自分で探してみたらん?」と、妖艶に笑って答えるばかりで、ちっとも口を割る気はないのだそうだ。
どうにか些細なヒントだけでも掴もうと、こうして度々保健室を訪れるのだ、とジェントルは二人に説明をした。
「しかし、保険医のレディは不在…さて、これからどうしたものかね」
「某笑顔動画でも見て暇潰せばいいじゃない」
「?なんだねデス君、その笑顔動画とやらは…?それよりもキミ、まだそんな面妖な仮面をつけているのかね?私の様に潔く外したまえよ、スマートではないな」
「無いと逆に落ち着かなくって」
「性格は豹変したというのに、外見は変わらないのだねキミは…」
剽軽な口調で話す死神に対し、ジェントルは訝しげな眼差しを向けるばかりであった。
すると不意に、リジェクトが「あった」と声を上げた。
「普通、消毒液は一番使うから手前に置いておくべきなのに…何で奥に入れておくかなあの女は」
「てか手前の方、何か怪しい薬ばっかだったね」
「得体の知れないものばかりだった…本当に何なんだあの女医」
「まあとりあえず、薬も見つかったしこの机に出した薬を戻そうか」
言いながら、デスは卓上に山積みされた薬の箱や包帯などを取ろうとしたときであった。
彼の伸ばした腕がぶつかり、ゴトゴトッと音を立てながら薬箱達は床に落下した。
「あー…何してんのさ、デス」
「ぶつかった。…てへぺろ☆」
「………」
「痛っ、ちょ、リジェクトさん痛いっス」
リジェクトがデスにローキックを連打している間に、ジェントルはカーテンがひかれたベッドの方へと歩み寄る。
そして二人に代わり、中に寝ていた人物へと謝罪の言葉を述べた。
「すまないね、騒がしくして…おや、寝ているのか」
スパァン!と背後から聞こえる快い平手打ちの音をBGMに、ジェントルは寝ている人物の顔を覗き見る。
そこにいたのは、以前茶会で会ったソレイユだった。
「これはこれは…こんな所で出会うとは」
一人呟きながら、彼は傍にあった椅子に腰掛けた。
顔が赤く額に汗を滲ませているのを確認すると、ジェントルは額に手を当てる。
「…ふむ、結構熱が高めだね。流行しているインフルエンザとやらじゃないといいんだが…」
そう言った後、ジェントルは静かにその場を離れた。
暫らくして、再度現れた彼の手には薬と水が入ったコップがあった。
それをベッドサイドの机に置くと、眠っているソレイユを起こさないように話す。
「恐らく、保険医のレディが処置してくれたとは思うが…一応、此処に薬を置いて行くとしよう」
「タミフルキタ━(゚∀゚)━! テンションみwなwぎwっwt」
「しっ、煩いよデス君…!亡者の覆面のレディ、彼を何とかしてくれ!」
「おk。デス、ちょっと表出ろ」
「\(^o^)/」
そうしてデスはリジェクトに引き摺られ、二人は保健室を出て行った。
ふう、と息をつくと、ジェントルは胸ポケットに挿してあった一輪の薔薇を手にする。
「…早く元気になってくれたまえよ、レディ。キミには笑顔が一番似合う」
薔薇をサイドの机に置くと、ソレイユの流れる髪を一房掬って軽くキスをした。
そうして香水のシプレ系の香りを微かに残して、彼も静かに部屋を後にしたのであった。
*END*
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あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『ジェントルメインで書いていると思ったら いつの間にかデスになっていた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うがr
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