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竜也は早足で俺のところへ来て携帯を取り上げた。まだ顔は蒼いまま。

「…柚麻、」
「………見たよ」

竜也は困惑の表情を浮かべ、しばらく俺の顔と携帯とを交互に見た。
言葉を考えているらしい。

「…勝手に見んなよ」

あまりに冷たい声で、俺はちょっとドッキリした。
だってまた謝るのかと思ったから。

「…だって、」
「理由がなんにしろ人のもん勝手にいじんなっての!」
「だって、でも、…俺ただ確かめようとしただけだよ」

あれ、なんで俺が怒られてる?
こんなに怒ってるのたぶん初めてみた。
涙が出た。怖いとかじゃなく、悲しくて。

「…でも、じゃあなんで携帯見ちゃいけないの!?見られたくないものがなんであるの?」
「は…、」
「なんで嘘ついたの?メールとかしないって約束したんじゃん!なんで!」

俺だって怒ってる。でもすごい泣いてるからちゃんと伝わってるかわからないけど。
なんでだこの嘘つき!とかふざけんなとかだんだん口の悪い言い合いを続けた末、竜也が「もういい!」と声を張った。

「…もういい、柚麻なんて、勝手にしろ」
「違うよ竜也が散々勝手にしてきたんだ!」

自分の部屋に入っていった。
しばらくしたら鞄を一つもって出てきて、俺のほうは見ずに玄関へ向かっていく。それを見たら俺は急にサッと血の気が引いた。

「え、ちょ、竜也」
「…………」
「…またあいつのとこ行くの」
「関係ないだろ」

関係ない?そうなの?
なんで、と肩を掴んだ手はあっという間に振り払われた。
なんで。

「なんで!…なんでだよ、竜也!」

そんなにいけなかったの?竜也が約束やぶったことを調べたのが、気がついたのがそんなに?

あっという間に出て行った。あっという間に取り残された。
それでただ、1人でずっと泣いた。

…俺がいけなかったんだろうか。さっきの竜也が怒ってた顔を思い出す。
浮気を見てみぬふりできない俺が、

意識がとぶ。

I should be hated.
僕が憎い?

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