06(4/4)
賢斗side何でか、亮太がいた。
目が合った時は慌てたけど、抱きついてきた亮太の小さな背中に思わず手を伸ばしかけた。
「俺怒ってないよっ」
何なんだ。
背中に伸びた手が止まった。
嗚呼やっぱり、何も変わってないじゃないか。
何にも、少しも。
甘やかさないという事を思い出して、俺は体を離した。
亮太が俺を見上げた。
「賢斗…、」
「…やめて、亮太」
「…あの、クッキー、」
「やめてってば…亮太は何にもわかってない」
亮太は、ふと顔を歪ませ泣きそうな表情になった。
それもワザとかな、
それとも本当か…
「…俺も待ってる。
だから俺の気持ちもっとわかってくれたら、そしたら来て、」
「やだっ…いかないで」
「亮太、……ごめん」
て、別に謝る所じゃない気もするけど。
クッキーが入っているらしい袋を持った亮太の手を、そっと下ろして俺は家に帰った。
後ろから聞こえるすすり泣く声に、耳を塞ぎたくなった。
END
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