06(3/4)
亮太sideクッキーを作った。
賢斗に会う口実を必死に探したから。
賢斗に届けよう。
クッキーを袋に入れて家を出た。
大学の前まで来てから、賢斗は今日休みだったことを思い出した。
「…どうしよ」
賢斗が何処に居るかわからない。
携帯に何度電話したって賢斗は出てくれないし。
「……なんだ…」
もったいない。
何のために作ったんだ。
はあ、と溜め息を吐いて、踵を返した。
―…嘘かと思った。
「賢斗…!」
「!…え」
大学のすぐ近くの公園。
この前鈴木君と通った所だ。
そのベンチで、賢斗が、今度は1人で座っていた。
目が合った。
賢斗は凄く驚いた顔をしたけれど、すぐに視界がぼやけてよく見えなくなってしまった。
気がついたら体が動いて、慌てて立ち上がったらしい賢斗に思い切り抱きついた。
「賢斗…っ!」
「ちょ、えっ」
会いたかった。
欲しかった温もり。
さっきまでの暗い気持ちが嘘のようで、一気に心が躍った。
やっと会えた―…!
「俺ね、またクッキー作ったよ!賢斗に渡したくって…」
「亮太…」
「早く帰ってきてよ…っ俺怒ってないよっ」
「………は、」
………………。
あれ、そういえば、怒ってるのは賢斗なんだっけ…?
変な妄想とゴチャゴチャになってしまった。
…あれ、
賢斗の体が離れた。
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