03(3/4)
「ん…んぅ?」
「!…愁」
「わあ、直樹だ。おはよー」
「はよ。…涎垂れてるぞ」
「ん…」
聞こえていないのか、曖昧に返事をしてまたウトウトし始める愁。
仕方ないのでティッシュで口から流れた涎を拭ってやった。
「起きろ。夜はとっくに終わったぞ」
「んー…」
「終わってないのか?」
「うん……」
「馬鹿。終わったんだよ」
「……おはよー」
「…はよ。」
ゴシゴシと目を擦った愁は、相変わらずのふにゃふにゃ笑いを浮かべた。
駄目だ。襲いたい。
いや駄目だ。
自重しろと自分に喝を入れて、俺に笑いかける愁から目を逸らした。
「クリスマス、ですかぁ」
放課後。下校しようとする生徒が行き交う廊下から、愁の声が聞こえてなんとなく教室から出るのを止めた。
そっと、顔を出して覗いてみると、愁はあの天敵糞野郎水野先輩と話をしていた。
「そう。君が良ければ、2人で出かけようよ。勿論お菓子も買ってあげるよ」
―なんだあの野郎、また愁をナンパしようってのか…クリスマスだと?馬鹿め。その日は俺と用事が…
…なかった。
「うーん。あ、でも俺駄目なんだった」
「何か用事があるの?」
「ないです」
「じゃあどうして…」
「直樹に駄目って言われたので駄目です。」
…よく覚えてたぞ愁!
さすが俺の嫁!と心の中でガッツポーズをすると、馬鹿水野先輩は慌てて説得し始めた。
「直樹君の言いなりになんかならなくていいんだよ?ね、クリスマスは俺と楽しく過ごそうよ」
「でも駄目です…」
「大丈夫。直樹君には秘密にする。」
バレてんぞコラ。
先輩が愁の手首を掴むと、愁はこれでもかというほど激しく顔を横に振った。
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