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「ん…んぅ?」

「!…愁」

「わあ、直樹だ。おはよー」

「はよ。…涎垂れてるぞ」

「ん…」


聞こえていないのか、曖昧に返事をしてまたウトウトし始める愁。
仕方ないのでティッシュで口から流れた涎を拭ってやった。


「起きろ。夜はとっくに終わったぞ」

「んー…」

「終わってないのか?」

「うん……」

「馬鹿。終わったんだよ」

「……おはよー」

「…はよ。」


ゴシゴシと目を擦った愁は、相変わらずのふにゃふにゃ笑いを浮かべた。
駄目だ。襲いたい。

いや駄目だ。
自重しろと自分に喝を入れて、俺に笑いかける愁から目を逸らした。












「クリスマス、ですかぁ」


放課後。下校しようとする生徒が行き交う廊下から、愁の声が聞こえてなんとなく教室から出るのを止めた。
そっと、顔を出して覗いてみると、愁はあの天敵糞野郎水野先輩と話をしていた。


「そう。君が良ければ、2人で出かけようよ。勿論お菓子も買ってあげるよ」


―なんだあの野郎、また愁をナンパしようってのか…クリスマスだと?馬鹿め。その日は俺と用事が…

…なかった。


「うーん。あ、でも俺駄目なんだった」

「何か用事があるの?」

「ないです」

「じゃあどうして…」

「直樹に駄目って言われたので駄目です。」


…よく覚えてたぞ愁!
さすが俺の嫁!と心の中でガッツポーズをすると、馬鹿水野先輩は慌てて説得し始めた。


「直樹君の言いなりになんかならなくていいんだよ?ね、クリスマスは俺と楽しく過ごそうよ」

「でも駄目です…」

「大丈夫。直樹君には秘密にする。」


バレてんぞコラ。
先輩が愁の手首を掴むと、愁はこれでもかというほど激しく顔を横に振った。

 

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