上(3/3)
実家に着くと愁のお母さん、お爺さんお婆さんが総出で迎えてくれて、手土産を渡しつつ愁の部屋に案内された。
「この部屋、俺んち!」
「和室か」
「羨ましい?」
「ああ。」
「荷物そこかそこかあっこに置いていいよ」
そこに置いとこう。
和室だから畳なんだけどベッドがあって、部屋を見渡す俺をよそに愁はベッドに腰かけ、快適だな〜と自分で言った。
「お前、携帯かわった」
「すまふぉ」
「俺のと同じ‥」
「そ」
くっ‥かわいいやつめ。
「きのこ育ててる!」
「きのこ?‥ああ」
アプリか。
「あとは電話とか‥、それだけ」
だけか。
絶対こいつスマホ使いこなせてないんだろうな。
「直樹はきのこ育ててる?」
「ああ」
最近は放置してたけど、愁がやってるならまたやってみよう。
ところで。
「学校はどうだ」
「あのねー、遠い」
いや、違くて。
「でも途中で猫がいっぱいいてついてくるからねー、怒るの」
「うん」
「すると逃げていく」
「そうか」
餌をあげるでもなく、抱き上げるでもなく、怒るのか。
「学校はねー、皆ふつう」
「ふつう?」
「ふつうの人間。ふつうの友達になったよ」
「‥そうか」
それは、なによりだな。
「でもねー」
ベッドの上で膝をかかえ、下を向く愁。
そばにより、しゃがんだ。
「いつもつまんないよ」
「…、」
「直樹いないから」
眉をさげて、それ以上声もあげず、ぽとりと涙を落とした。
end
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