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"すまほによだれ"
愁の家から帰ってきて1ヶ月ほどたったころ、授業中にきた短いメール。
スマホに涎?
というより愁も授業中なはずだよな。
平仮名だけの、明らかにスマホ慣れないオーラ漂うメールに思わず笑みが零れた。
"寝不足?"
こっちも一言だけで返すと、5分くらいたって返事がきた。
"はちじかん"
8時間。
愁にとったら寝不足か。
なめこの栽培もほどほどにしろという忠告をして、いったんのメールは終わった。
俺と同じように、今、愁も俺のことを考えながらメールしてたんだ。
俺から電話やメールすることはもちろんしょっちゅうだけど、愁からも意外にきたりする。
こんど、お小遣いを貰ったらこっちに遊びにくるそうだ。
また、会える。
俺ももっと会いにいけるように、バイトするのもいいかもしれない。
そうしよ。
遠距離とか、関係ないのかもしれない。
毎日顔を見たり、触れ合ったりすることはできなくてもメールや電話はできる。
それに思ってたよりは、結構会えるらしい。
それで十分なわけではなくとも会えるときは倍幸せに感じられる。
愁は愁で、毎日それなりに過ごしているらしい。
「俺いまねー、月に赤いレーザーのやつあててるけど、直樹見える?」
「ん‥ああ」
もちろん嘘。
見えるわけないのに、でも見えるような気もした。
「じゃー今から字かくから、なにかあてていーよ」
「んー……み、の、む、し」
「まだ書いてないよ」
書いてなかった。
「じゃあみのむしってかく」
「わかった」
もし月まで行ったら、赤いレーザーでみのむしと書く愁が見えるだろうか。
どちらにしろ、今愁はあそこに文字を書いている。
今、同じ月を見ている。
同じ星で、同じ月を。
fin.
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