冬の遮光に揺れる生気のない雑草が白く色を染めて並んでいる
しゃがみ込んで雑草の芽を抜くと腹の真ん中あたりで「ぐう」と虫の鳴く声が聞こえた

そういや丸一日、何も食べてないや。

記憶を辿るのも面倒でむしゃくしゃしたから、なにも考えずに摘んだ雑草を口の中に放り込んだ
案の定というか、予想通りの味で堪え難い苦さや不味さに反射的に吐き出せば頭がガンガンと痛んだ。

同時に、泣き声が聞こえた
わんわんと子供みたいに泣く声が頭の中で微かに響いて一種の耳なりみたい
聞きたくないな。なんなんだよ耳障りな

そしたらその声が妙にリアルになってきて、気がついたらもう遅かった


『しっ、しげる...!』

「!」

ナマエさん。って言おうその声は、正面から抱きついてきたナマエさんのいい匂いのする肩で籠もっただけで
そっか、さっきまでの泣き声はナマエさんの声だったんだって分かった。俺が家を出る前のナマエさんの泣き声


「ナマエさん、苦しい」

『ごめ...ごめんね、でも、
離しちゃったらまたしげるが
消えちゃいそうで...』


離れないし消えないよ。
あの後家を飛び出して俺を追いかけてきてくれたんだろ?
俺より薄着で、多分本人は気づいてないけど裸足だったからわかるよ、その時の状況が目に見えてわかる。

「...俺も、ごめんね」

『うん、...うんっ』

「年上のくせに泣き虫だな」

『うん...』


いつまでたっても泣き止まないナマエさんが愛しくてたまらなかった。
外で、人前で、足も傷だらけで、鼻水もダラダラなのにそんな事も気にしないで泣き続けて俺に抱きついたままだからさ
でも余りにもすぎてるから、ちょっと笑ってしまった











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