先日顔を合わせた女の人は誰がどう見ても完璧な美人で、そりゃあもう千人いたら千人が「美人」だと言えるほど
偶然だと思ったけれどきっと待ち伏せされていたんだろう。通勤時に通る広い公園のでその美人はさも一般的な私の前に立ちはだかりキリリとした眉を上げたのだ

「へぇ、貴女が銀さんの玩具ね」

だらしなく口を開けたまま、本当にいきなりだったから美人さんの言ってる事が分からず。玩具?
露出の高い高級そうな服から白い肌を覗かせ、サラサラの長い黒髪を払い私の前でいかに勝ち組度を見せつけている。風に乗りふわりと香る香水の匂いが鼻についたからあの日の事は鮮明に思い出せた



あの美人さんは一体誰なんだろう、銀さんの誰なんだろう。玩具ってどういうことなんだろうまあいいか気にしないでおこう

『銀さん』

「?」


言いかけてやめた。開けた口を手で塞いで、不思議そうな顔をしている銀さんに目で笑いかける
いくら気にしないでおこうと思っても引っかかるもんは引っかかるでしょう?でも馬鹿馬鹿しくて聞きたい事も聞けないのよ!だから森田くん、抱いて!


「な、何言ってんだよ...
ちょっと考えが飛びすぎだぞ?」

『考えすぎたのよ私は!
もうセックスでもして楽に、
どうでもよくなりたいの!』

「おいっ苗字っ!」


きつく酔った森田くんの力は弱くて、簡単に押し倒してこれからの行為に興奮し荒くなる甘い息が空回る
なんだ森田くん、抵抗してる割に勃ってるじゃん。と楽しんでる自分がやけに寂しく感じて、苦しかった。

私と森田くんがこんな事をしてるように、銀さんも私以外の誰かとセックスするのだろう。私は銀さんに愛を向けているけど銀さんは私とのプレイに愛を向けているのかわからないじゃない
私は銀さんが他の人を本当に愛していると思ったら辛くて潰れそうになるけど、銀さんにとって私がどうでもいい女ならそれすらどうでもいいんだろうな。


森田くんの体格いい肩にしがみつきながらじっと考える。考えれば考える程、思い浮かぶ笑顔が疑心の泥に濡れ、沈没する愛日は意識と共に薄れていくのだ








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