「やーね、女の煙草は」
『私より綺麗な顔して
よく言うわ』
あー、調子狂うな
もう月も眠るような夜中に、1人の女が、俺の知り合いなんだけど。公園のベンチで煙草吸ってちゃあそら批判してみたくもなるもんだ。ついでに俺も吸ってるけど
「てか薄着すぎ」
『きっと、一条のその
コンビニおでんくれたら
あったまるなー』
上着カーディガン一枚でよくもそんな余裕ぶれるな。と子供のように笑う苗字の横に座ってコンビニの袋を差し出せばこれもまた子供のように嬉しそうに受けとる。
こいつ手袋もしてねぇじゃねぇか。馬鹿か。
「何してんだよ」
『いやー、外に出たくって』
「やっぱ馬鹿。ライターかせ」
くわえながら苗字の方に顔を近づければ笑いながら安っぽいライターで火をつけてくれる
おでん一つでどれだけ喜んでんだか
おでんの蓋を開ければ苗字の顔は出汁の匂いの湯気に覆われた。あー勿体無い、俺なんでこんな奴に餌付けしてんだろ
『美味しい美味しい』
「当たり前だ、俺が買った
おでんだからな」
『熱っ』
「聞いてんのか...」
やっぱり調子狂うな。
その女っぽさとはかけ離れた言動、服装。なのにそれでも何処かこいつに惹かれてしまう自分がいるのはどうしてか、狂ってんのか。
思考がとんでもない方向に行く前にどうにかしなければ...と、苗字が食べるおでんの具を咄嗟につまんで食べた。
『手で!』
「文句言うなよ。第一それ
俺が買ったやつだろうが」
『それならお箸で...
せっかく間接キス出来たのに』
「馬鹿っ!気持ち悪いこと
抜かしてんじゃねぇ!」
こいつと間接...っなんて死んでも嫌だ。気持ち悪い気持ち悪い!
苗字も少しは自重気味になれねぇのかよってかなんでそんな薄着なんだよ!
公園にある街灯が苗字に当たってるから白いブラウスから見える白い鎖骨に影が出来てて、そんな苗字の姿を見ていたらこっちまで寒くなるだろ、ボケ
「洗ってかえせよ」
『え?くれるの?一条優しい』
「あげる訳ねぇだろ」
『嬉しい!一条今日なんか
優しいねっ』
今日、じゃなくて、苗字だからだろ。ってのは言えないし。絶対言わない。