人里離れた山中、小粒の雨が降り続ける暗くじめったい天気、泥濘、滴る雨、汚れたスコップと立ち尽くす少女
その少し後ろから見守っていた原田は、跳ねる泥で革靴やズボンの裾を汚しながらも濡れる少女の肩に手を置いて傘の中に入れた。
「ようやった、上出来や
これでナマエも一人前。
やくざ稼業を職と呼べる...」
『....』
息詰まるような閉塞された森林。ナマエは原田に声をかけられようともただじっと地面を見ていた
同じように原田も
まだ立つことも出来ない赤ん坊の頃からナマエは原田の属す暴力団に拾われ預けられ育てられた。
原田は闇に塗れた世界でナマエの純粋な白さに救われ、進んで育て、愛される笑顔を愛した
こうするしかない...こうするしかないんや...
これ以上ナマエを組に置くには手を染めねばならん、
激しい心の葛藤。
死体破棄を手伝わせて正真正銘やくざの世界に足を踏み入れ、もう離れる事は無くなったという安心感と対立する
ナマエの無表情。
この時原田は初めてナマエの枯れた表情を見たのだ
"笑顔を奪ってしまった"というのが何よりも原田の心中を青く染めていた
『...克美ちゃん、雨、
雨強うなってきたなあ』
「おう、帰るか...?」
『この人も、死んだ日が
雨やって知ったら嫌やろなあ』
強くなる雨の中で少し盛り上がった地面を、死体が埋まる地面を撫でるナマエの笑顔は脆く、死んでいった