「そういやナマエ、
お前髪綺麗だよな」


なんて机に肘ついていた手を急に伸ばして私の髪をさっと撫でた
だから思わず咄嗟に

『嫌味にしか聞こえない!』

と言ったら細い眉をつん上がらせて怒ってくる


「ほんっと可愛くねぇなお前
こっちはそんなつもりで
言ってないのに」

『だっておかしいじゃない
急に、いきなりそんな
髪が綺麗だなんて言う!?
そんな面白くない事で
私を驚かせようとして...』


だから私だって怒ってやる。
そしたら前以上にネチネチと怒ってくるから私も黙ってられない


『大体聖也のほうこそ
睫毛長くて整ってて
綺麗すぎるのよ』

「ああ!?嫌味か!」

『ほら!そうなるでしょ』



アパートの一室で幕開けた謎の攻々戦


「お前こそ目が大きい」
『あなただって爪綺麗』
「うなじが細長い」
『いい匂いがする』



内容は内容だが本人達は至って真剣に怒って、怒ってこんな奴話にならないと苛立たしくも腹の中で比例して膨れる変な嬉しさを抱いている似たもの同士












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