長かった髪がばっさりと切り落とされているのを見て、ぎょっとして瞬きを繰り返す。
ねえ、どうしちゃったの、それ、と聞いたところで答えてくれるはずもなく、いつも風と共に静かに靡いていた髪は、今や首もとで切り揃えられ、大人しく揺れるだけだった。

知らないの、あのこ、失恋したのよ。


失恋したから髪を切るだなんて、なんてベタな。と笑い捨てればよかったのか。そんな繊細な心の持ち主だったのかい、とからかってあげればよかったのか。
彼女が失恋したことなんて、知らなかった。それどころか、恋をしていたことさえ知らなかった。あの静かに波打つ水面のような瞳は誰のことを見ていたのだろう。普段固く閉ざされた唇は、誰の名前を溢したんだろう。あの強そうで頼りない背中を、誰が傷つけたのだろう。いつの間にか自分より背の小さくなってしまった、けれど少女から女性へと確実に変化を遂げた彼女のことを、今どれだけ理解できているのかわからない。知らない間に恋をして、知らない間に傷ついてしまった彼女は、あの頃より随分と綺麗だった。

あんなの嘘よ、と言われるまで、みっともなく嫉妬に狂っては、小さな背を抱いて壊してしまいたくなるほど、彼女に恋い焦がれている自分は、きっと目も当てられないほどに醜いだろう。











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