少し目元を赤くする彼女は今までで一番美しく私には感じました。その一報が舞い込んできたのはもう少し冷たい風が頬を撫でる夏の終わり、彼女の名の季節でした。そのことを聞いた彼女は、そう、と笑って、けれど少し泣きました。私は何も言わず傍にいました。それだけが私にできることだとわかっていたからです。他の何を、彼女にできるでしょう。与えられるでしょう。今まででちくちくと心地好い痛みを与えていた恋は、今大きく彼女の心を切り裂いたのです。誰を恨むことができましょうか。誰も悪くないのです。彼が選んだのが彼女ではないということ、どうしてそれが恨めましょう。彼の幸せを願うならと、彼女はその大事な言葉をしまいこんでしまいました。それを責めることはできません。もし、彼が彼女の気持ちに気づいていたなら、彼女がその気持ちを打ち明けていたのなら、今微笑んでいたのは彼女だったのかもしれません。けれど想像しても仕方がないことなのでありましょう。今、彼女がひっそりと声も出さずに泣いている、それだけが事実なのでした。

「少しだけ臆病で、だから結局言えなかった。選んでくれるのを待っていた。だから選ばれなかった。それだけのことなのよ」

そうして彼女はまたひとつ滴を溢すのです。こうして静かに傷つく彼女は世界で一番美しいと私には感じます。それはやはり、酷いことなのでしょう。
泣く彼女を慰めることなどできません。どんな言葉も彼女を救うことなどできません。だからこそ私を誰も慰めることも救うこともできないでしょう。
少しだけ臆病で、だから言えなかった。それはまさしく、私のことなのです。

(好きです)

(あなたのことが好きです)

(ずっと、)

私がこの気持ちを打ち明けられないのを、誰が責めることができましょうか。
私もそっと、声に出さず心の中で涙を溢すのです。










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