つまるところ、思い上がっていたのだ。あぁ、よくわかった。よくわかっていなかったことが、よくわかった。

「あたしは、あんたが嫌いだ」

だってあんたは、あたしから全部奪っていった。あたしたちみたいなクズにとって、あの場所がどんなに楽園だったか、あんたは知らないでしょう。そう、あそこはあたしの楽園だった。何者にも犯されることがなかった、汚いあたしたちの掃き溜め。あいつがいて、あたしがいて、それだけでよかった。ねぇ、あんたは知らないんでしょう。それがどれだけ救いだったのか。だから平気で全部奪っていけるんだ。

「死ね。死ね死ね死ね、死んでよ、ねぇ、返してよ。あたしにあいつを返してよ」

殴った。殴りかたなんか知らなかったから、手はじんじんと傷んで、手のひらを爪が傷つけた。それでも殴った。死んじゃえ。死んじゃえ。死んじゃえ。死んでよ。そしてあたしに返してよ。あたしにはあいつしかいないの。あたしにはあいつだけなの。例えあいつにはあたしだけじゃなくても。あたしだけがひとりぼっちでも。

「返してよ」

つまるところ、思い上がっていたのだ。あたしにはあいつしかいなかったように、あいつにもあたししかいないと思っていた。ずっとあたしとあいつだけでいられると思っていた。それであたしとあいつの世界は満たされると思っていた。とんだ思い上がりだ。あいつはあたしがいなくても生きていけるのに。
あいつはひとりぼっちじゃなくて、いつの間にかあたしの代わりにあんたがいた。あんな風に笑うあいつなんか知らない。あいつはあたしの知らないあいつになっちゃった。殺されちゃった。あんたが殺したんだ。

「返してよ、返して」

泣いて殴ってもあいつはあたしの隣に帰ってこない。あいつがいないことが、こんなにも苦しくて痛いこと、あんたは知らないでしょう。鬼道。










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