二人が二人でいられたなら、きっと言葉なんかいらなかった。余計なことを見てしまう目も、雑音ばかり入ってくる耳も、全部ぜんぶ、いらなかった。ただひとつ、このひとだけを感じ取れる両手さえあれば、すべてが満たされる気がした。

「浮気しないでくださいね」
「俺が浮気するとしたら海くらいなもんだろ」
「そうですよね」

だけど手が届かなければこのひとに触れられない。抱き締められない。言葉だけじゃ物足りないし、写真だけでは満たされない。電波しか届かないこの場所では、悲しいほどに、ただひたすら恋焦がれるしかないのだった。










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