道也のことが好きだった。頭が良いところが好きだったし、あまりうるさくないところも好きだった。本を捲るときの長い指だとか、時々組む足だとか、遠くを見るときに寄る眉間の皺だとか、そういうところが好きだった。何より、夢を見させるようなことを、まったく言わないところが好きだった。俺は道也から未来の話なんか聞いたこともないし聞かれたこともないし、愛してるだなんて薄っぺらい言葉も貰ったためしがない。それでよかった。そんな道也のことを、俺は心の底から好きだった。
(笑えることに、いつ切れてもおかしくない関係である分、いつ切れてもいいように、俺は心の底から、全力で、一秒だって休むことなく道也のことを愛していた。なんて皮肉で、なんて幸せな形なんだろう)










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