「染岡くん、ぼくはね、もうすぐ死ぬひとがわかるんだよ。ほら、さっき、交差点で染岡くんにぶつかったサラリーマンがいたでしょ。すぐ謝ってくれたし、いいひとそうだったよね。でもきっとあのひとはもうすぐ死ぬんだ。たぶん病気か何かじゃないかな。顔色が少し悪かったし。染岡くん、ぼくはね、きっと死神に好かれてしまったんだよ。ぼくから家族を奪ったあの事故から、ぼくはもうすぐ死ぬひとが一目でわかるようになったんだ。知っているひと知らないひと関係ない。なんとなくね、わかるんだよ。そして実際に死ぬんだ。あぁ、やっぱりあのひとは死んでしまったんだな、って少しだけ悲しくなるけど、でも、その程度だよね。一番悲しいことなんてとっくの昔にすぎちゃったんだよ。ただ、ちょっとだけちくちくする程度の悲しさってやつ。ぼくはさ、そうやって針で刺されたような気持ちを味わうたびに、薄情なやつだなって思うんだ。だってぼくはそのひとが死んでしまうのがわかるんだからね。でも、どうでもいいんだ。針で刺されたような痛みがあるたびに、ぼくにはそのひとがその程度のひとだってわかるから。でも、もし、それ以上の痛みがあるなら、ぼくはそのひとが大切だったってことかな。ねぇ、どうだろう」

吹雪は可哀そうなやつだと思う。それは不幸な境遇によるものではなくて、そう、あまり上手くは言えないが、とにかく吹雪は可哀そうな奴だと思う。きっと吹雪は可哀そうだなんて言われ慣れているんだろう。事故によって自分以外の家族が全員死んでしまったんだから。俺はそれに軽々しく声をかけることはできない。俺はそういった過去よりも、もっと別のところが、可哀そうだと感じているからだ。

「安心してよ染岡くん。染岡くんは当分死なないよ。でも、もし染岡くんが死んじゃったら、そうだな、すごく痛いんだろうね。それこそ、泣いちゃうくらいに」










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