俺が棒派で不動はカップ派だった。この季節には欠かせない、アイスの話だ。暑くなり始めると、不動は冷蔵庫の中を綺麗に整頓したかと思えば、そこにぎゅうぎゅうにアイスを詰め始める。完全に暑くなったら、買いに行く気力すらないからだと、不動は言う。コンビニやスーパーで買ってきたたくさんの種類のカップアイスをぎゅうぎゅうつめて、その隙間に、お情けで、棒アイスを突っ込んでいるから、俺が食べたいと思った時には微妙に形が変わっていたりする。俺の家の俺の冷蔵庫なはずなのに、と文句を言いたくなる時もあるが、暑さにやられている不動はいつもの五割増しで暴力的になるため、俺は大人しく、ちまちまと棒アイスを齧るしかない。きっと、頭の回転が遅くなって口も回らないから、暴力的になるのだ。
 カップアイス派の不動はしかし、自分でアイスを食べるのを酷く面倒くさがる。テーブルに突っ伏して少しばかりの冷たさを吸収しながら、口を開ける。その口に、俺は餌付けしている気分でスプーンで掬ったアイスを運んでやるのだ。そんなことをしながら俺もアイスを食べるわけだから、当然ながら俺の持っているアイスは溶けて、だらだらべたべたと、手に流れていく。そんな俺のアイスの残骸を、不動はたまに、気まぐれに舐めとったりした。
 不動も棒アイス派になればいいのに、と思う。そうしたら不動だって食べるのは楽だろうし、例え不動がそれでもめんどくさくなったって、俺が食べさせるのは楽だから。けれど不動は、それじゃ意味がないと言う。何がだ、と聞いても、溶けたバニラアイスで塗れた手を甘噛みする不動は、きっと涼しくなる頃にならないと答えてくれないだろう。










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