※こばなしの立不の続き





 そりゃあ、いいよ、とは言ったけれどさ。
 限度っていうもんがあるんじゃないの。

 なぁ、立向居。ぎゅうぅうう、っと頬を抓られひっぱられても抵抗できないのは確かに立向居が悪いからだ。今までわんこのようだと常々思ってはいたけれど、まさか餌を出されてがっつくさままでわんこのようとは。おかげで俺はもうベッドから今日一日起きれそうにないし、だるいし、頭痛いし、あとすごく喉が擦れてるしで、散々である。途中で、まて、って何度も言ったのに。わんこからようやく人間様に戻った立向居は、床に正座をして、すみませんすみませんと涙声で謝った。引っ張った両方のほっぺたは赤くなって、自分でやったことなのに我ながら痛そうだなぁと思う。

「俺、着替え持ってきてないんだけど」
「その、今、洗濯してて」
「シャツとかボタン取れたけどお前つけられんの」
「ええと、その、俺の着替え貸すので」
「サイズ違うじゃん」

 悔しいことに成長しても身長さは縮まるどころかこいつはにょきにょきと大きくなるので、今でも見上げないことには目を合わすことができないのは、なんだかとてもむかつく。出会ったころはただひょろっとしているだけだったのが、今ではしっかりと筋肉もついて、こいつが理性をなくしてしまえば俺は力では勝てないのだった。理性があるうちは、口で勝てるけど。
 怒られた立向居は、しゅん、と小さくなって、垂れた耳やしっぽが見えるようだった。昨日はあんなにぱたぱたしっぽを振っていたのに。それを見て、ちょっとだけ気分は晴れたけれど、せっかくだからもっとねちねちと苛めてやりたい。

「明日、お前用事は」
「えっと、午後からバイトが、」
「休みとって」
「え」
「休み」

 じぃ、とベッドの上から睨みつければ、立向居はちょっと泣きそうな目で、はい、と頷いてぽちぽちとメールを打つ。たぶん、バイト先に休みを取るためだ。携帯をぱたんと閉じた立向居の頭を、よくできましたと手を伸ばして撫でてやると、気持ち良さそうに目を瞑った。

「そっち、いってもいいですか」

 おずおずと聞いてくる立向居に、まぁ頑張ったからご褒美をやらなきゃなと考えて、ぽんぽんとベッドの隣を叩けば、立向居はぱぁっと顔を輝かせてすぐにベッドに上がって、隣に転がった。
 明日は立向居のバイトの給料日だし、立向居に新しい服を買わせよう。別にボタンなんか俺が付け直せばいいけど、せっかくだし。そんで散々、ご飯とか奢らせて、でも夕食は俺が作ってやろう。こいつが好きなハンバーグ。
 ぎゅうっと抱きついてくる立向居に、けれどキス以上は全部おあずけして、そしてまた明日になったら、いいよ、って言ってやろう。
 







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