そういえばもうすぐ定期テストだな、とか空気を読まずに言いだすのは案の定源田の奴だった。今の時期遅くまで残って自主練をしているやつは大抵直前に焦って勉強しなくても点が取れるやつか、あきらめているやつなのだとどうしてこいつは気付かないのだろう。そして佐久間は完全に後者だった。現実逃避のように練習に打ち込む姿はいっそ哀れである。

「勉強会でもする?」

 どうせ明日から強制的に部室締め出されるわけだし。紙パックのジュースを飲みながら、気だるげに小鳥遊は言う。こいつはここが男子更衣室で俺たちが今まさに着替えていることなんか全く気にした様子はない。

「どうせ佐久間ろくにノート取ってないだろ。毎回寝てるし」
「朝練がきつすぎるから眠くなるんだ」

 それ言ったら帝国サッカー部は全員追試する羽目になるぞ。
 たぶん、佐久間も平均点以下取るようなくらい馬鹿ではないと信じたい。これでも帝国サッカー部の参謀役なのだし。

「そういえば、50以下取った奴がいたら、今年から追試まで部活休止だっていう話だ」

 思い出したように源田が言う。文武両道を掲げるだけあって、こういうところは帝国は比較的厳しい。帝国のレベルは高いから転入組である俺と小鳥遊も最初は苦戦したが、天下の帝国とあって教えるのもかなりうまい。ある程度の理解力があり授業さえ聞いていれば50点は余裕だ。授業中寝るような馬鹿さえ抜かせば。佐久間の方へ視線を動かせば、かわいそうなくらい真っ青になっている。

「ざぁんねん。これで佐久間ちゃんはレギュラー落ちだな。活動休止だもんな」
「活動休止はあたしたちもよ」
「はぁ?」
「部全体が連帯責任なんのよ。あんた、知らなかったの」

 つまり、それって佐久間がテストでやばい点取れば俺たちにもとばっちりくるってことだろ。ていうかそれって後輩の方もやばいんじゃないか。明らかに成神とか勉強してなさそうな顔してるし。創造だけど。俺たちと違って後輩はもうテスト間際とだけあって自主練せずに帰っているが、かといってちゃんと勉強しているかどうか不安である。テスト一週間前の明日から部室は閉まるようになっているが、恐らく空き教室を使って勉強会を開かなければ本気でやばい。

「源田ぁ。連絡網で部員全員招集かけろ。明日から勉強会」
「自分でやんなさいよ。たぶん源田がやったら逃げられるわよ。舐められてるから」

 おい。本人の前で言ってやるなよ。流石に可哀想だろ。薄々俺も気づいていたけれど。
 溜息をついてぽちぽちと携帯を弄る。
 
「佐久間と、あと勉強してなさそうなやつらとか前のテストで点数低かったやつは強制参加な。源田、結構人数いるし適当に広い空き教室借りてこいよ」

 あぁ、と頷いて着替え終わった源田は部室を出て行く。よくよく考えればこうして無意識でパシリに使ってしまうからこそ後輩にも舐められてる気がする。でもあいつあんまり文句言わないから使い勝手いいんだよな。

「今まで受けたテストの問題とかコピーして後輩に配っとくとか。あー、テスト休みはゆっくり出来ると思ったのによ。佐久間の馬鹿のせいで」
「馬鹿じゃない! 勉強すればできる!」

 だったら最初から勉強してろよ。もう一度盛大に溜息を吐けば、小鳥遊が、大変ね仮キャプテンさんとにやにや笑う。あぁ、本当だよ。馬鹿のお守は勘弁だ。早く帰ってきてこの馬鹿なんとかしてよ、鬼道クン。








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