「俺にとって秋姉は実の姉同然の存在なので、あなたのこともお兄さんと呼んだほうがいいんでしょうか」
「その理屈が続けば人類皆兄弟になれるね。お兄さんと呼ばれるのは悪い気はしないよ」
「お兄さん、俺はあなたが嫌いです。大嫌いです。秋姉の心をもぎ取ってしまったあなたが大嫌いです。いったいどんな魔法を使ったんですか」
「魔法じゃないよ。魔術さ」
「なにがちがうんですか」
「魔法と違って夢を見せない。ただ騙しているだけなんだよ」

(天馬と一之瀬)


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剣城の足の付け根には綺麗に一周した傷痕が薄く残っている。

「兄さんにあげようと思ったんだ。でも兄さんはいらないって。兄さんの足の代わりにもなれないなんて、こんなやくたたず、必要ない」

 剣城はそう言って足の付け根を強く叩いた。だん、だん、だん。今までで何度か叩いたのかそこは奇妙な紫をしている。何かに恐怖するように叩き続ける剣城の手を取って、撫でた。

「いらないなら俺にちょうだいよ」

 綺麗な薄い傷痕を舐めれば、剣城は泣きそうにひきつった声をあげた。不健康な白く長い足はきっと剣城のだからこんなに綺麗なのだ。

(天馬と京介)


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「監督の奥さんってどんなひとなんですか」
「美人で気が強くて料理が下手なひとだよ」
「どんなところが好きなんですか」
「美人で気が強くて料理が下手なところかな」

(天馬と円堂)


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「俺、やっぱりお前が嫌いだよ」
「俺は嫌われるの、悪い気がしませんけど」
「なんで」
「俺の嫌なところを誰よりも理解してくれるから」
「俺にはお前が理解できない。お前の理解できないところが俺は嫌いだ」

(天馬と倉間)


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 キャプテンの泣き虫なところが好きなのだと彼は言う。小さな頃からキャプテンを見続けて、泣いている顔が一番好きらしい。

「あいつは純粋でだからあんなに可愛くて、あいつが純粋じゃなくなるくらい傷つく瞬間を想像すると堪らない。俺は純粋なあいつしか知らないからあいつが純粋じゃなくなったときあいつを愛せるかはわからない。けれどその瞬間がすごく楽しみなんだ」

 あー、きっとこの先輩はキャプテンへの愛だとかなんとかで不純物だらけの真っ黒なものでできているんだなー、と俺は思うのだった。

(天馬と蘭丸)








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