あーあ、鬼道クンが妊娠してくれればいいのになぁーと、不動は足をぶらぶらさせて不満げに呟いた。ベッドに腰かける不動は俺のシャツを羽織っているだけだから、白く細い素足は、ひどく寒そうに見える。隣に座る俺の足を踏んで、あったかいと笑って、それから、やっぱり鬼道クンが子供産めればいいのに、と唇を尖らせた。

「お前が女だから別に俺が産めるようになる必要などないだろう」
「やーだね。だって、陣痛って痛いんだろ。生理痛でも毎月死にそうになってるってのにさ。それに、俺、鬼道クンが産んだ子なら愛せる気がする」

 だって俺が子供産んだとして、遺伝子は確かに半分かもしれないけど、実際に栄養分け与えてるのって俺だろ。だったらそれって、なんだか俺の割合のほうが大きい感じがして、気持ち悪い。それよりだったら、鬼道クンが別の誰かに子供産ませたほうがマシだね。あ、絶対俺が知らないやつな。知っているやつならそいつに嫉妬しちゃうから。そうしたら、俺はその子が鬼道クンの子供ってことしか知らないから、俺にとっては100%鬼道クンの子供で、すごく愛せる気がする。
 不動の奇妙な潔癖と、奇妙な理論は、俺の理解を時々越える。不動は絶対俺と食器は共有しないし、キスをすれば早く口を濯いでこいと洗面所に放り込む。他人から自分に対しての潔癖なのではなく、自分から他人に対する潔癖なのだ。初めは俺に対して絶対手は触って来ずに、服の裾をちょい、と掴んで引き留めていた。それはそれで別にいいのだが、恋人ならもっと甘ったるくしてみたい。手を握るのもキスをするのにも、こういうことをするのにも、付き合いはじめてからずいぶんと経ってからだった。俺のことが嫌いでの行動ではないかとすら思ったが、今では、こうして足を絡めるくらいなら自分からしてくれるようになった。恐らくはあとで風呂に叩き込まれるだろうが。

「それでもお前は子供が欲しいんだな」
「うん、だってさぁ」

 俺、子供育てて子供と一緒に仕事から帰ってくる鬼道クンを待ったり、一緒に遊園地行ったり、近所で鬼道家の奥さんって呼ばれるのが夢なんだもん、と顔を赤らめる不動に俺は堪らず抱きついて、数分後に風呂場に押し込められることになった。









人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -