「なにこれ」
「花火」
「見りゃわかる」
「福引きで当たったんだ」

 キッチンの下から仏壇用ロウソクを取り出した源田は(何故かうちには仏壇がないのに仏壇用ロウソクがある)俺の手をひいて公園へと向かった。深夜二時過ぎの公園には当たり前だが誰もいなくて、源田は砂をかき集めてロウソクに火をつけた。俺はといえば携帯をかちかちしながら源田の手元を照らしていただけである。ほら、と源田に手渡され俺は花火に火をつける。深夜だから煩くはできないしそもそも俺も源田もあまり口数が多いほうではない。別のだれかとやったほうが盛り上がっただろうに。黙々と男二人で花火してなにが楽しいんだろ。
 と考えているときに空気も読まず源田が楽しいなとぽつりと言うもんだから源田の持つ花火を燃やしてやろうとくっつけた。けれど燃えるものに燃えるものをくっつけたところで火が若干大きくなるばかりだ。あーあ、仲良く二つとも燃え尽きちゃった。



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 ぶきっちょめ、と俺は源田の作ったかぼちゃなのかよくわからないものを笑ってやった。来る10月31日いわゆるハロウィンは、帝国付属の幼稚舎と小等部で大々的にイベントが行われるらしい。ようするにガキが大挙して中等部に押し寄せてくるからそれの相手をしろってことで、俺たちは今から飾り付けの準備をしているわけだ。厚紙でポスター作ったりとか、窓に飾りをつけたりとか、そういうの。源田は不器用だから、あんまり上手に飾りを作れない。こいつ、手、でかいなって、だから上手くできないのかな、っては思うけど、役立たず、とも同時に思う。源田の役立たず。しょうがないから、俺が切ってやるから窓にセロハンテープで貼ってけよ、とテープを放り投げる。頭に当たった。間抜けめ。

「源田もやったわけ、仮装」
「まぁ、ええと、合わせて九年か。あれ、実は毎年衣装は手作りのやつじゃないと駄目なんだ。毎年新しい衣装にするのが大変だから、先輩からお下がり貰ったりしていたな」
「へぇ」
「仮装も楽しかったけれど、裏方で準備をするほうが楽しいな。渡すお菓子は配布されるから、用意する面倒はないし。俺はうまく作れないけど飾りを作るのだって、楽しい」

 ふぅん、と俺は適当に頷いて鋏を走らせる。俺は、源田の仮装見てみたかったけどな。たぶん、すっごく間抜けな感じなんだろう。

「げんだ」
「ん?」
「とりっくおあとりーと」
「気が早いな」
「うっせ」

 こんな作業ばっかりでいい加減疲れた。甘いものが欲しいと喚いてやれば源田はポケットから飴玉を一つ取り出して、包みを剥がして、放ってきた。うまくそれを口でキャッチして、舌先で転がす。あいつはいつもあそこのポケットに飴玉を入れてるのだ。ハロウィンまでに、ポケットに穴開けてやろうかな、と計画を立ててみたり。



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 そろそろこたつ出そうぜ、と言う不動に、こたつなぁ、と曖昧に返す。しゃくしゃくと冷えた梨を齧って体温を下げるのに心地よいくらいの今じゃ、こたつはまだ早いだろう。それに、こたつを出せば不動はよくそこで寝てしまうから、風邪をひいてしまいがちなのだ。去年なんか酷かった。鼻もずびずび鳴らすし、咳も繰り返すものだから早く病院に行けと忠告したというのにだいじょうぶだいじょうぶとひらひら手を振るものだから、悪化して40度近い熱を出したのだ。引きずって点滴を受けている不動は、うわ言で、しぬ、しんでしまう、と繰り返していた。結局生きていてそのことをすっかり忘れているからこうしてまたこたつこたつこたつー、と喚くのだろうけど。
 こたつ早く出せよぉ、源田、とごろごろベッドに転がって要求する不動に対して、梨食べるか、と話を反らす。たべる。餌付けは成功。ほら、と自分も一口食べながら爪楊枝で刺した梨を渡せば、そちらには目もくれず、不動は俺のくわえてる梨にかじりついた。










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