「なんで女子って寒ぃのに生足出せるわけ」

 あほくさい不動の質問に答える気にもなれず、あたしは持っていたココアの缶をぎゅうっと握りしめた。寒さが身体に痛い。甘ったるぅいココアは身体に染み込むけれど、その先から痛い風が熱を片っ端から奪っていく。冬は嫌い。春は虫が出るから嫌い。夏は暑いから嫌い。秋は食べ物が美味しいけれど、勉強勉強と言われる時期だから、あんまり好きじゃない。こうしてみれば、一年って嫌いなものばかりだ。

「なんであんたって寒いのにそんな頭していられんの」
「うっせ」
「毛糸の帽子でも買えばいいじゃない」
「ちくちくするんだよ」

 それでも見ているこっちが寒いのだ。教室では膝掛けを頭から被って寝ていることもある。あまりにあほくさい光景に私は呆れたが、佐久間は写メを撮っていた。ゲーセンで取ったという膝掛けはあまりにファンシーだ。当たり前だがあまり似合っていない。そんなに寒いならと、席替えで暖房の前に移動させられたが、今度は暖房が暑いらしく、机に顔を突っ伏してやる気なさげに寝ている。いつもやる気がないのだ。きっと、内申点は悪すぎるに決まってる。

「もうすぐ期末ね」
「まぁ俺はまた源田にノート写させてもらうし」
「今度という今度は鬼道らへんが怒るんじゃないの」
「赤点取るのと源田にノート写させてもらうのとどっちがマシかって言っとけばなんとかなるって」

 源田はノートをまとめるのが上手い。まぁ、まとめるのが上手いだけで、その分手間を食ってしまい、成績に結び付いているのかは不明なところである。ともあれ、帝国サッカー部ではそれなりに源田のノートは需要があって、アテにしすぎてあまり勉強しなさすぎるのも問題だと鬼道は大変ご立腹なのだった。なんだかんだでこいつは要領がいいから、すぐに鬼道を丸めこむだろう。

「テスト終わったらどっか行くか」
「ゲーセン。新しい膝掛け取りに行くの。春先はまだ寒そうだし」
「おまえ、前に持ってたじゃねぇか」
「なにが悲しくてあんたとおそろいの膝掛け使わなきゃならないのよ」

 そう、あの膝掛けはあたしだってゲーセンで取っていたのだ。せっかく学校で使おうと持ってきたその朝、不動がひざかけを頭から被って寝ているから、結局日の目を見ることがなかった。寝ている不動の椅子を蹴飛ばすくらいには、むかついた。そもそも、あたしの方が先に取ったのをこいつも見ていたはずなのに、そのあと同じものを取って学校に持ってくるだなんて、酷い嫌がらせすぎる。思い出せばまたむかむかしてきて、前を歩く不動の足を蹴飛ばす。

「いってーよ、この非処女」
「うっさいのよ非童貞」
「乱れた現代少年少女の性って怖いわァ」
「相手が一人しかいないんだからまだマシでしょ」

 それを聞いて、不動は腹を抱えてげらげらと笑った。下品な笑い方にむかついて、鞄でがつがつと殴りかかる。不動はあたしを苛々させる天才だ。もともと、どんな奴でも苛々させる天才ではあったけれど、あたしに対してはさらに特別なのだ。あぁ、苛々する。
 それと同じく、あたしの機嫌を直すのも、格別に上手いわけだけど。

「そういや、おまえが欲しがってたあのぬいぐるみ、二匹同じの取れたけど一匹いる?」
「いるに決まってんでしょ。馬鹿じゃないの」








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