源田は犬のようなやつだ。誰にも見えないが、きっとあいつの尻には尻尾がついていて、誰かと話すたびにぶんぶんと振っているに違いない。おい、と言っただけで源田にはわかったようで、すぐにテーブルの上のペットボトルを俺に放り投げた。馬鹿野郎、炭酸だっつーの。そうして、いかにも褒めて欲しそうにこちらを見るのだ。褒めて褒めて褒めて、ってな。はいはい良くできましたねぇと十回に一度は気まぐれを起こして頭をぐりぐり撫でてやる。こうして俺は躾をしてやるのだ。立派な飼い主様だろう。そのうち首輪をつけてやろう。ぎゅうぎゅうに締め付けて、万が一にも逃げ出さないように鎖で繋いでやるのだ。きっと源田にはよく似合うだろう。


 不動は猫のようなやつだ。俺はときどき黒くて長い尻尾が生えていやしないか確かめる。当たり前だがそこには何もなくて、おまえって変態かよと言われてしまった。不動はとても気まぐれなやつで、すぐ機嫌が悪くなるし、その一秒後にはテンションが急にあがっていたりもする。ほら、駄目だぞ、と言ったところで聞き届けられたことはめったにない。飼い主を翻弄する猫のようだとつくづく思うのだ。実際不動は俺があれこれやってやらないとソファの上で丸まって動かないし、ふらふらどこかにでかけて戻ってこない。これは俺が飼い主になってしっかり首輪をつけてやらないと、と一人決意してみる。ちりんちりんと鳴る鈴をつけてやれば、不動の様子が遠くからでもわかるだろう。








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