源田の今の趣味は五百円貯金だ。逆に見つけるのが難しいんじゃないかってくらいの典型的な可愛くないピンク色の豚の貯金箱に、財布の中の五百円を入れるのだ。最近では、買い物に行ってお釣りで五百円を貰うのが楽しみでならないらしい。相変わらずお気楽なやつすぎる。五百円貯金なのだから、札はもちろんのこと、百円も五十円も十円も一円も入れてはいけないわけで、不細工な豚はまだまだ空腹、腹三分目もいってない。源田が五百円を入れたあとに、がちゃんがちゃんとうるさい音を鳴らしてどのくらいまで貯金ができたか確かめるのが変に面白かった。勝手に中身を使ってやろうかと思ったが、どうやら金槌か何かで割らないと中身が取り出せないようで、ちぇ、と唇を尖らせてみたこともあった。そうだ、豚が満腹になったら、源田が持ってきた金槌を奪って、目の前で割ってみるのもいいかもしれない。そちらの方が面白そうだ。

「この貯金箱が満杯になったら、何買おうな」

 さて、豚が満腹になるくらいだから、その胃の中にはどれだけ五百円が詰まっていることだろう。十円や一円がいっぱいになったのとは違うのだ。二枚で千円。二十枚で一万円。新しいサッカーボールだって買えるし、こいつのことだからグローブなんかを買うのかもしれない。貯金の醍醐味とは、貯金している間にその使い道を考えることらしい。俺は貯金をしたことがないからさっぱりわからん。けれど俺にあれこれ貯金の使い方を話す源田は、別に嫌いじゃない。がしゃんがしゃんと豚を揺らして、源田は溜まってきた貯金に嬉しそうに笑うのだ。俺は今日も財布の中からこっそり特別に入れてやった五百円で、源田の笑顔を買う。

「そうだ、不動。この豚が満杯になったら、最初に何か一緒に美味しいものでも食べに行かないか」

 まぁこれも、将来のための投資ってやつ。








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