ほうら、みてみろ

やまなしおちなしいみなし。
あーゆーれでぃ?



最近、忍術学園にやってきた仔猫たちを、俺はよく見る。
それにしても、俺と同じ名前のつり目猫は、文次郎と同じ名前の仔猫を好きすぎると思う。

見てるこっちが、痒くなるんだが。



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「あ」
猫の留三郎は小さく声をあげる。
その視線の先には、不自然に空いた―――正確には意図的に掘られた穴がぱっくり口をあけていた。
耳をすますと、風にのって小さい鼻歌が穴のなかから聞こえてくる。

「………」
なんとなく想像がついた。
猫の留三郎はしかめっ面のままため息をはく。

今度、穴ほり小僧に会ったら顔をバリバリに引っ掻いてやる。

ソソっと穴に近づき、中をのぞけば、やはり想像した光景があった。

「もんにろー…、またおっこったの?」
「あっ、とめ! そこでなにしてるのー?」

それはこっちのセリフである。
猫の留三郎は、内心でツッコミをいれた。
しかも質問を質問で返したな。

「みて!」
「?」

心のなかでぼそぼそつぶやいていると、穴のなかのもんにろうが何かを抱き締めている。
よく見ると野ウサギの子どもを大切そうに

…抱き締めている

抱き締めて、いる?


「ずるいいいいっ」

猫の留三郎はしっぽを逆立てながらいきおいよく穴のかなに飛び込んだ。
突然落ちてきた猫に少しも動じず、

「みてー、とめのかおよりちっちゃーい」

キャッキャッと能天気に笑うもんにろう。
一方猫の留三郎は野ウサギをもんにろうから奪うと、

「なんでこんなやつぎゅーすんの」

明らかにぶすくれている。
自分だってぎゅーってされたいのに。

すると、もんにろうはけろっとした顔で言った。


「だってこのこ、ひとりであなにおっこちて、さみしそうだったんだもん」

猫の留三郎は、一瞬『それがなんだ』という顔を見せる。
が、すぐに表情筋をゆるめて言った。

「もんにろーのそうゆうとこ、好き」
「?」
「誰にでも優しくしちゃうの、もんにろーのいいとこだもんな」
「よくわかんない」
「む………。まあ、とにかくもんにろーがだいすきってこと」
「えへへー」



「でも、かわいそうだからってぎゅー、すんのなしね」
「なんで?」
「………………もんにろーのそーゆーところはちょっと嫌い……………………………………嘘だよー! もんにろー大好きだああっ」
「\キャー/」




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覗き込んだ落とし穴の中で、俺似の仔猫が、相手の服を引っ張ったり、抱き締めようとしたり、どこで覚えたんだと思うほどのキザな愛のセリフを叫んでいる。
小さい文次郎似の仔猫は、狭い穴の中で懸命に逃げていた。

が、

やはり、

なんというか、





つかまってしまった。



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なにこれ(´^ω^`)




2013/09/10 19:08





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