▽ 〜2/9
「人って殺しても殺しても減らないよな。」
「うん。」
「なんで死ぬんだろうな。」
「うん。」
「俺らは何処に、行くんだろうな。」
「うん。」
「……聞いてんのかよ。」
「うん。」
はぁ、とそこで初めて汀目くんはわたしを見た。
学校帰りにたまたま一緒になってしまったのだ。
……なってしまった、なんて言っているが、実はこうなることを期待して態と時間を潰したりしたのだけれど。
「後悔ってしてもしてもしきれないよな。」
「うん。」
「今俺が何考えてるか分かるか?」
「うん。」
「「何感慨深くなってんだよ。」」
折角声を揃えて言ったのに、汀目くんは別段驚いた風でもなく「正解。」と同じ調子で言いはなった。
「それってわたしに言ってる?自分に言ってる?」
「どっちもだよ。」
自分からこの収集のつかない話を持ち出してきたくせに、まるでどうでもいいと言っているような口振りだった。
わたしたちにはそれだけの話題がないのだからしょうがない。
「……悩みがあるなら聞いてあげるよ。適切なアドバイスはないけど。」
「かはは、馬鹿言え。お前なんかに話す悩みだったら即刻解決してるぜ。」
「……。」
随分失礼な物言いだったが、なんだかそれがとても汀目くんらしかったので、小さく肘で小突くだけにした。
二人で帰る道のりはまだまだある。
小突いたところから発した熱はまだ冷めないのだ。
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