▽ 〜14. 1/22
ハッピーメリークリスマス!
「って、なにがメリークリスマスだばかやろー!なぁーにがメリクリだこのやろー面白くもなんっともないんだよこんちくしょー!」
そんな声が響く本日は12月25日。
しかし海底の潜水艦の中では世間が騒ぐクリスマスなどあってないに等しいのである。
「うぅ……クリスマスケーキ…ツリー…リース…サンタさん…陸が恋しいよぅ…」
「……陸になんて上がったらリア充ばっかだ。そう思うしかないな…」
「……それもそうだ」
同じように隣で虚勢を張っているのはシャチだった。
お祭り騒ぎが船の中で誰よりも好きなシャチは、まず間違いなく拗ねている。
いや。小さく騒ごうとは計画を立てていなくもなかったのだ。
その為に前回の上陸の際に色々買い出しにシャチと二人で出掛けたのだが、買った食料を色々あって余分に買った分を手放してしまったのだ。
「そうだ全部シャチが悪い…」
「あぁ?」
「あそこでシャチが孤児を見つけなかったら…」
「確かに孤児たちを見付けたのはおれだけど、食料を態々あげたのはお前だろーが」
「だって……だってこのハートの海賊団のクルーで孤児を見て見ぬふりなんて出来ないよ!ペンさんだってキャプテンだって昔こっそり貧困街の人を無償で診てあげてたもん!」
世間では悪者で絶対的悪である存在のわたしたちだけど。
それでもそれだってわたしたちの正義に、夢に、浪漫に基づいて生きているのだ。
「……まぁいんじゃねー?あのガキどもにはちと早いクリスマスプレゼントになっただろ」
「ふふ…、じゃあ差詰わたしとシャチがサンタクロース?」
「ん……。まぁそうなるな」
「なかなかそれは……悪くないね」
「おー」
敵対されるべきならず者が夢を配るサンタクロースだなんて、こそばゆい。
「よぉーし、じゃあシャチ、ワインでも探しに行くか!皆でちょっと飲もう」
「そうだな!まだ酒は確かあったはず…」
豪華なご馳走はないし、ツリーもリースもプレゼントさえもないクリスマスの夜だけれど、サンタクロースは確かにわたしに何かを届けてくれたようで、心は温かかった。
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