「おー、雷蔵いたいた。…って三郎も一緒か。待て、待て待て。今日は当てるぞ、いいか喋るなよ。
 ……よし、右が三郎で左が雷蔵だな?当たりだろ、うん?」

「先生、ハズレ。俺、三郎っす。こっち雷蔵」

「あー…」

「で、先生、僕になんのご用ですか?」

「ん、これ返しといてくれ。今日図書室行けそうにないんだ」

「わかりました」








「ってな、ことがあってね」

「雷蔵と三郎の見分けなんか一発じゃんねー」

 と、ブラウスのボタンを外しながら名前が言う。
 現在昼休み、五限の学年合同の選択体育に備え、更衣室でお着替えタイムである。

「そりゃオレ達は付き合い長いからあれだけど、そうじゃなかったら難しいんじゃね?」

「ハチは、どうやって二人見分けてんの?」

「え、なんつーか、雰囲気つか、ほらわかるじゃん。そういう名前はどうなんだよ?」

「私はほら」

 名前はブラウス全開ブラ丸出しで、びしすっ!と三郎と雷蔵を指差した。

「ずばりおっぱいだよ!」

「ちょ、名前!」

 慌てて胸を隠そうとする雷蔵の腕を、名前はむんずと掴んだ。三郎も雷蔵も着替え途中で、ブラのままである。

「えー、同じくらいじゃないの?」

「ふっ、甘いよ、勘ちゃん! よく見るんだ! 三郎の胸の不自然さに!」

「あ、名前! てめぇっ…!」

 その刹那、名前は手管のスリのごとき手さばきで、三郎のブラから何かを掠め取った。
 ――三角形をした、ジェル素材の何か。

「豊胸パット…」

 兵助がぽつりと呟くと、三郎が「やめてぇえええぇえぇ」と顔を隠した。隠しきれていない耳まで赤い。

「すごーい! ビフォーアフターみたい!」

 勘右衛門が更に追い打ちをかけた。三郎と雷蔵の胸を見比べながら、きゃっきゃっと騒ぐ。

「うるせー! 大体勘ちゃんだって貧乳組だろ!」

「あ、自分で貧乳って認めた」

「名前! お前もだからな! つかパット返せ!
 …あぁ、お前は貧乳っていうより幼児体形か。胸より腹のほうがむにむにだもんなぁ」

 三郎が名前の腹を叩くと、ぽふっと良い音がした。

「くびれもないし、これじゃ小学生だなぁ。今時小学生のほうがもっと発育良いか、うん、幼稚園児だよ幼稚園児」

「三郎、貴様ぁ…!」

「ちょっと二人とも…」

「「ええーい止めるな雷蔵!」」

「くびれと」

「おっぱいの」

「「ある雷蔵に我々の気持ちはわかるまい!」」

「えー、そんなぁ…」

 困惑する雷蔵の胸を、勘右衛門がじっと見つめる。

「改めて見ると、雷蔵って着痩せするんだね。何カップ?」

「え、前に測った時はD…だったかなぁ…」

「D?!」

 名前と三郎が驚き目を見開き、すぐに顔が青ざめた。

「雷蔵! この間までCって言ってたじゃないか、いつのまに…!」

「ブラきつくなってきたから、お店で測ってもらったんだよ」

「この裏切り者!!」

 三郎はさめざめと泣き出した。一卵性双生児だというのに、この違いである。かくも世界は不公平なのだ。

「畜生、またパット足さないと…」

「そういや兵助って、いっつも下着白いよな。兵助くらいだったら、標準サイズだし、可愛いのたくさんあるだろ? もったいない」

「ハチ、何を言ってるんだ!」

 兵助は下から着替えるタイプらしく、シャツにパンツと言うなんとも萌え〜な出で立ちをしていた。

「白は豆腐の色! 豆乳の色! こんなに神聖な、純潔の色なんだぞ!」

(ダメだこいつなんとかしないと…)

 他の五人の冷たい視線をよそに、兵助は延々と豆腐の白さの素晴らしさについて語っていた。

「ってことは、ハチは、あんまりサイズないの?」

「うん? まあ…な」

「何カップだよ?」

 名前と三郎と勘右衛門のチーム貧乳からただならぬオーラが放たれている。答えても答えなくても、ロクな目に合わないことは明白だった。

「…G」

「「「はぁ???」」」

 三人同時に叫んだかと思うと、「ABCD…」と指折り数え始めた。指が七を示したところで、三人が硬直した。

「いや、デカくてもいいことないぞ? 走る時邪魔だし、肩凝るし、サイズないし…」

「……三郎、勘ちゃん、ターゲット捕獲!」

「「いえっさー!!」」

「えぇ?!」

 哀れ、八左ヱ門は三郎と勘右衛門に羽交い締めにされた。捕らわれの八左ヱ門に、不気味に手をワキワキさせる名前が迫る。

「八左ヱ門のくせにけしからんおっぱいしやがって…! 」

「名前! 目が、目がマジなんですけど…!!」

「ホルスタインなんぞこうしてくれるわ!!」

「いけ! 名前!!」

「猥褻物陳列罪に粛正を!!」

「あっ、ちょっ、いやぁっ!」

「雷蔵、着替え終わったら授業行くぞ」

「あ、うん…。ねぇ、あれ放っておいていいのかな…?」

「いいんじゃない? ああやって揉むと、余計ハチの胸大きくするだけって、気付いてないみたいだし」

「おわ、名前、マジで勘弁…って、直に触るなぁああぁい!! ていうか揉むなぁあああ!!」

「すげぇ! おっぱいマジパネェ! この手に重力を感じる…っ!」

「俺も! 俺も触る!!」

「俺も!」

「いやぁあぁあ!!」











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ちなみに名前→AA(幼児体型) 三郎→A(モデル体型) 雷蔵→D(普通) 兵助→C(スレンダー) 勘ちゃん→B(むちむち)の設定(^q^)


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