※ゆるいえろです。






「…お邪魔しまーす」


日向は重そうなエナメルバッグと、置き勉してきたことが丸分かりな薄い制鞄を下ろすと「飲みもん取ってくるわ」と言い残して部屋を出て行った。


初めて通された部屋を見回す。変に片付きすぎていないところだとか、なんだか率直に日向らしいと思った。勉強机の上で申し訳程度に立てられている教科書に対して、本棚の中に所狭しと並べられた本はバスケに関する本は几帳面に並べられていて、彼がいかに大事にしているかが伝わってくる。優先順位のわかりやすい部屋だ。


「なにまじまじと見てんだよ。面白いもんなんてなんもねーだろが」


部屋に戻ってきた日向が冷たい麦茶を差し出してくれる。優しいなあ。喉を通る冷たさが気持ちいい。追っていた本の背表紙から目線を変えて言う。


「こういうとこいいよね、日向」

「は!? いきなりイミわかんねーよ」


私は入学直後金髪でロン毛だった彼のことを思い出す。クラスは違ったが、同じクラスで仲のよかった木吉がえらく執心しててよく話は聞いていた。私は周りが言うほど似合わないとは思わなかったけど、やはり今の髪型の方が似合っていて日向らしいことは確かだ。

日向は思ってたよりも不真面目で、思ったよりも子供っぽくて、そして私が思ってる何倍も真摯にバスケに向き合っている。そういうところに惹かれてしまう。ただのルーティーンだった日々は日向率いるバスケ部のお陰でほんのり色づいてくれた。


「ありがとうね」

「だからいきなりなんだっつーの」

「日向たちを見てるだけで毎日楽しいから」

「…俺らはただ毎日バスケしてるだけだろーが」


ダアホ、とおまけをつけて日向は私の頭を乱暴に撫でた。もう満たされてたまらない気持ちになる。本当に彼が好きだ。彼もそう思ってくれたのか、後頭部を抑えられて口づけされた。あ、思ったより長い。一度息を吐いてきつく抱きつく。そしてまた角度を変えながら何回も繰り返すと、ごく自然な流れで肩をゆっくりと押されベッドに下ろされた。これから先に起こることを予測して、心臓がドクドク音を立て始めた。そこには不安と期待が入り混じっている。


「…嫌ならやめる」

「嫌じゃないよ」


日向がシャツを脱いで筋肉質な上半身が露わになる。一度口づけられたあと、セーラーがたくし上げられ脇腹にキスされる。手が動いて背中に回った手がホックを外した。日向の微妙にぎこちない動作。しかしそれさえも愛しい。真剣な瞳。ブラがたくしあげられたところで、日向の手が止まった。


「…え、どうしたの?」

「柄にもなく緊張してんだよ…聞くな」


カチャカチャという音が聞こえる。緊張している、というのは本当のようで意外とてこずってる膝立ちでそれをする日向に大丈夫かと目線をやると、やっとバックルを外すことができたようだった。そして見えたのは、


「あ、私があげたパンツ」

「だからお前は言うなっての!ハズいだろが!」


顔を赤くした日向が一度ため息をつき、仕切り直しとばかりにメガネを外した。メガネを外した顔も私は整ってる方だと思っている。私があげたブランド物のパンツは、日向を思って買っただけあって似合っていた。大好きだけでは表せない感情を胸に私は日向の首を引き寄せて強く口づけた。負けてられないとばかりにやり返してくる日向にまた幸せを感じて私は全身で彼を受け止めようとするのだった。



20120921
企画the Battle Under Clothes提出

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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