「よい、しょ、っ……!」


男の体は重たく大きく
タクシーを降りてから
自宅のマンションの部屋まで
私はその大きな体を背負って歩く

若干その体からなんとも言えない
臭いが出ているのに気付いたが
そんなこと考えている余裕も無かった



タクシーの運転手さんは
手伝いもしてくれなくって
私はどこか胸が苦しかった



なんとか部屋に着き
その体をゆっくりソファへと
男性を横に寝かせると、
そのソファ下で私は一息をつく


「ぜぇっ、ぜぇっ……
こ、こんなに…男の人って…重いのか」


パタパタと熱くなった顔を
手で扇いで、私はハッと気づく

大量の汗、熱…



「もしかして……」


振り返りその男の首元に触れる
あきらかに通常の体温で無かった


「氷!氷!」


全然関わったことのない
できれば関わりたくもなかった
見知らぬ男、しかもホームレスに
私は一体なにをしてるんだろう

と心のどこかで思いつつ


でも心配で堪らない自分が居た





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氷枕を敷き、熱冷ましシートをして
上の服を1枚脱がせて毛布をかけ
顔と上半身の汗を隈無く拭き取った

思ったよりもがっちりしている
上半身の胸筋や腕筋を見て
私は首を傾げる


(ホームレスにしては…
体が出来すぎてる気が……)



被っていたキャップも外して
顔を拭いてあげたせいか
顔立ちも良く見えた


凛々しい眉毛で、まつ毛は長く
まじまじと覗き込んでいた時



「ん……、んん……」

「あっ!」


ゆっくりと目を開き
ゆっくりと私と目線が合う


そして思ったよりも
綺麗なその大きな瞳に
思わずドキッとしてしまう



「ここ、は……、君は……?」

「ここは私の家です
体の調子はどうですか?
私の声、聞こえてますか?」

「うっ……!」


頭を押さえて痛みを堪え
また顔には大量の汗が溢れ出る


「大丈夫ですかっ?」


用意していた氷水につけた
タオルをしっかりと絞り
顔の汗をすばやく拭き取った


男は痛みが和らいだのか
そのまま目を閉じ眠ってしまった





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