そして、あっさりと龍が落ちた




「まぁ、あれだけ飲んだ後だし
落ちるのも当然か・・・
でも、ドキドキしたなぁ・・・」


酔う直前で踏み止まったなまえは
先ほどの桐生との出来事を思い出し
ドキドキと鳴り止まない鼓動を抑えた



「あのままあの部屋に連れられてたら
私は桐生さんに・・・」


顔が真っ赤に火照る
考えただけでもこの有様だ



そんな中、冴島さんが目を覚ます



「ん・・・なんや、みょうじ
お前来てたんか・・・」

「さ、冴島さんっ!!」



大分お酒も抜けているようで
私は唯一の良心的存在(笑)に
ほっと胸をなで下ろした



「いつから来てたんや」

「つ、ついさっき・・・です」



桐生さんをチラチラと見ながら
不安そうに嘘をついた


「そうか、お疲れやったな仕事」

「本当、疲れましたよ・・・」



さっきの出来事に勘付かれては
いないようで、さらにほっとする

冴島は桐生と真島を見ると
頭を掻いて「なんやこれは」と呟いた


「皆さんどれだけ飲んでたんですか」

「いや、途中までは覚えてるんやけどな
コイツがボトル開け始めてから記憶が・・・」

「真島さん・・・」


苦笑しながら私は真島さんを見る
それから少しだけ他愛もない話をして
今飲んでいるお酒が無くなった頃だった



「みょうじ、それとってくれ」

「はい、あっ・・・!」



手を伸ばして言われたものを
取ろうとしたその時
袖がグラスに引っ掛かり
膝へとお酒をこぼしてしまった


「冷た〜・・・」

「怪我とかないか?」

「あ、それは全然!
グラスは割れてないんで!」


冴島は席から立ち上がり
カウンター裏に向かうと
タオルのようなものを持って来て
なまえの膝へとタオルをあてがった



「あ、ありがとうございますっ」

「かなり濡れてもうてるな」

「仕事着なんて何着もありますし
全然いいんですよ!
気にしないでください」

「でも、このままやと気持ち悪いやろ」


冴島さんのちょっとした気遣いと
タオル越しに伝わる冴島さんの手に
ドキドキとしてしまう

顔をブンブンと振っては
右隣のアホそうに眠っている
真島さんを見て心を落ち着かせた


だが、冴島さんがタオル越しに
私の膝を拭くように撫でるたび
真島さんの顔で治まらないほど
ドキドキと鼓動が早くなる



「さ、冴島さん・・・私もう
自分で拭くので良いですよ・・・?」

「ええんや、もうちょっと
このまま・・・触れされてくれや」

「・・・!?」


そう言いながら冴島は
スカートを少しだけずらすと
直接肌に手を密着させ
ゴツゴツとした力強い手で
優しくなまえの膝を撫で始めた








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