「…っ…んん、…ふわぁ…
すっかり寝てた…」



ぼんやり目が覚めると
頭痛や寒さは無かった



というより、まだ温かい?

よく見ると、私はまだ腕に
包まれて胸元で眠っていた


慌てて私は飛び起きる


「ど、堂島さんっ!!
ごめんなさい!私すっかり寝…
…あ、あれ…?」




顔を上げるとそこに居たのは
堂島さんではなく








「……桐生、さん?!」






そこには私を抱いたまま
壁にもたれかかり
こくり、こくりと首を縦に振り
眠っている桐生さんだった



「い、いつの間に…?
あの時…来てくれたのは
堂島さん、だったよね…あれ?」

「ん、んん…」

「桐生さん、桐生さんっ」




眉間に皺を寄せて
眠りから覚めかけている
桐生さんの腕を揺らす


見間違い?錯覚?
というか、まさかの夢?
いやいや、そんなことはないはず



自分で自分に問いかけていると
桐生さんは完全に目を覚ました




「ん…なまえ起きたのか
体は、もう平気なのか?」

「は、はい…さっきより
ずっとずっと良くなりました
ありがとうございます」

「そうか、それは良かったな」

「あ、あの…桐生さんどうして此処に?」

「そうか、お前寝てたから
どうなったのか知らねぇよな」




私はうんうん、と頷いた

桐生さんは私を抱いたまま
若干体制を変えて座り直す




「あ、すみませんっ…
重たいですよね…降りますっ…」

「いや、別にいい…
この方が、俺は落ち着くな」

「えっ…お、落ち着く…?」

「お前の顔をこんなに近くで
見るのは、なにげに初めてかもしれねぇな」

「な、なに言ってるんですか…っ
そんなことより…どうして此処に
居るのか聞かせてくださいっ…」



間近で見る桐生さんの顔は
彫りが深く、真剣な目をしていて
そんな力強い瞳に見つめられ
私はドキっとして話を逸らすと
同時にパッっと目も逸らした




「まぁ、簡単に言うと
大吾にお前を看るよう
俺が代理を頼まれたってワケだ…」

「…私…堂島さんの
仕事の邪魔しちゃったんですね…」

「お前が気にする必要なんてねぇよ
それに、少なくともアイツは
そう思ってはないと思うがな」

「そう、ですかね…
それに、桐生さんにまで
迷惑かけちゃいましたし…」







私は今日の出来事を振り返る

朝、昼、夜、そして今も
一日中、私は皆に
助けられてばかりで

でもなぜ風邪をひいただけの
私をこんなに気にかけて
くれるのか、不思議だった




「私みたいな人にも
優しくしてくれる人って、居るんですね
谷村も、冴島さんも…
堂島さんも、そして桐生さんも…」

「…なに言ってんだ」




コン、と桐生さんは私の
おでこに拳を軽く当てる



「それだけお前が大切なんだよ」

「!!そ、それは…
ありがたいことですね…
私も、皆は大切な仲間です」



”大切”と言われて
素直に嬉しがる私に
桐生さんは顔を歪めて
おい、と肩を揺らした



「え、なっ、なんですか?」

「お前、もしかして
気づいてないってこと…ねぇよな?」

「…なににですか…?」

「……気づいてなかったのか…」

「え??」




きょとん、と首を傾げる私に
桐生さんは頭を掻いて
呆れたような表情で
私をさらに抱き寄せた





「谷村も、冴島も、大吾も
…俺も、お前を求めてるってことだ」









衝撃な言葉を聞いて
固まったのが



深夜を回った時の出来事だった。











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