「……!!」




パッと目を覚ますと
私はベッドの上にいた

体には布団がかけられている




少し前の出来事が思い出せない程
頭が熱くぼーっとしていた




「ん、起きたのか」



さっき話していた声が
電話から聞こえる




「あ、そっか……さっき…
私、谷村と電話してたっけ…」

「そんでお前が床に
落ちた音が聞こえて…」

「そうそう、床に落ちて…」





ん??



その声はあまりにも近すぎて



軽く首を傾げては
顔だけ横に振り向く





この声は、電話からじゃない





「なに?」

「……、え?」

「だから、なんだ?って」

「えっ?!?!」




横にいるのは、さっきの
電話の主、谷村だった


電話の先に居たと思えば
隣にいるものだから
驚いて叫んでしまい
ずさっと壁の方へと後退る

谷村はお構いなしに
ベッドに身を乗り出してきた




「ななななんで此処に?!」

「居たら悪いのか?」

「そっ、そういう意味じゃなくて!
でもっ、あれ…鍵は…?!」

「鍵?あぁ、鍵ね…
…………、そんなことより…」

「そんなことよりって…
どうせ谷村がピッキン…、…っ!!」


ピッキング、と言う前に
目の前に座った谷村に
片手で顔を添えられ
目線を合わせられる


「とにかく、じっとしてろ」

「へっ、なっ、なに?!」

そういうと谷村は
自分と私の前髪を掻きあげ
顔を近づけおでこをくっつけた



「……っ、!!」

「あっつ、やっぱお前
熱出してるぞ、しかも高熱」

「…ねっ…ね、ねつ…?!」

「……落ち着けなまえ
もっと熱くなってどうする」


頭から湯気が出そうなほど
自分の顔が熱くなる
そりゃ熱もあるだろう



なまえの体を優しく
支えてベッドへ寝かせると
布団をかけて谷村は立ち上がる




「谷村……?」

「そろそろ、仕事行かねぇと
一応俺、遅刻した身だし…」

「…ご、ごめん
心配かけちゃって…」

「一人で、大丈夫か?」

「あ、……うん」



谷村があの時電話して
くれなかったら
ここに来てくれなかったら

そう考えると怖くなった



谷村は微かに笑うと
上着を羽織る



「飲み物と、ご飯
ここに置いてるから」

「あ、ありがとう」

「あ、あとこれ携帯な
熱冷ましもこの中に…
……なまえ」

「……どうかした?」


急に黙り込んだ谷村を
不思議に思い、私は顔を覗く

すると急にすばやく
目の前にしゃがみこんで
布団ごと、勢いよくぎゅっと
体を抱き締められた



「っ!!」

「…一緒にいられなくて悪い
できるなら…ずっと傍に
居たかったんだけどな」

「っ…た、谷村…」

「……なんかあったら
すぐに電話しろ」

「……うっ、うん分かった」



一時抱かれたままの状態に
私は呆然としてしまう

体をゆっくり離して
横に寝かせられると
谷村は再度立ち上がる



「それじゃあな」

「仕事、頑張って」

「おう」



赤くなった顔がバレないよう
谷村は後ろを振り向いて
手を振って出ていった









それが、午前中の出来事。










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