桐生はいままでにない
とてつもなく恐ろしい形相で
蔭島を睨み返す


蔭島は成すすべが
無くなったことを察すると
勢いよくスーツを脱いだ


「結局は・・・極道のやり方で
やり合うしか、ないようですね」


蔭島の背中から胸元には
「蜘蛛」と「蜘蛛の巣」の
刺青が廻るように掘られていた


「桐生さん・・・
蜘蛛の知恵っていうのは
結構しぶといものなんですよ・・・」


蔭島は桐生を煽るが
桐生は気に留めることなく
同じようにスーツを脱ぐ



「・・・死ぬ気でかかってこい」



桐生は手で相手を煽ると
蔭島は大きな唸り声を上げ
殺意を燃やして飛びかかる

蔭島の動きを全て
読んでいるかのように
桐生は相手の拳を避けていく



「おらぁああっ!!」

「・・・お前の生きがいを
失った屈辱はこんなもんなのか・・・」

「お前に・・・なにが分かるッ・・・!」


鋭く構えた蔭島の手先は
桐生の顔へと当たり
微かに血が出る程の擦り傷を作る


「・・・親を失うってのが
どれだけ辛いかなんて知ってる」

「分かるわけねえ・・・!
お前なんかに、お前なんかに
知られてたまるかよっ・・・!
うらぁあああああああ!」

大きく廻した強い蹴りは
桐生の横腹に直撃する


「・・・なっ・・・!?」

しかし微動だにしない桐生は
力を込めた拳を
蔭島の顎へと振り上げる


「かはっ・・・!!」


その衝撃で飛ばされた蔭島は
地面に手をついて痛みを堪え
口から溢れる血を手で拭い取る

桐生はコツコツと目の前まで
攻め寄ると蔭島を見下げた


「・・・そんなもんじゃ
葛城も報われねえな、蔭島」

「・・・・・・・!!!!!!
桐生ぅううう!うぁあああああ!!」


プツンとなにかが切れる
音がすると蔭島は
表情を一変させて
目にも見えない速さで
桐生の顔を殴り飛ばした


「くっ・・・そうだ・・・
誰かの為に、命張んのは・・・
そんな生温いもんじゃねえはずだ」

「・・・な、なんなんだよ・・・
お前・・・知ったような口
効きやがって・・・」

その拳を躱すことも
できたはずの桐生は
真正面から拳をわざと受け
蔭島は恐れ腰を抜かして後退る


「・・・俺も、お前も・・・
似たようなもんなんだよ・・・」

「・・・っ、な・・・」


後退る蔭島を追うように
桐生は詰め寄っていく


「自分の親を守りきれなかったのは
自分の弱さが原因なんじゃねえのか」

「・・・!」

「生きがいってのはな
自分が守り抜いてこそ
残るもんなんだ・・・

立てよ、蔭島」

「・・・桐生」

「お前に守るべきものはあるか」

「・・・あるに、決まってんじゃねえか」

「俺に負けたとき、それは
お前の弱さだと認めろ」

「うるせえ・・・
俺にだってそんなことぐらい
・・・分かってんだよ!!」


ゆっくり立ち上がると
蔭島は拳を構えた
同じように桐生も拳を構え



「桐生ぅぅうううううう!!!」

「蔭島ぁあああああああ!!!」



二人は大きな声と共に
力強い拳を交えた









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