次の日、神室町へと帰ってきた
グレーのスーツを纏った桐生は
早速ニューセレナへと向かった


「桐生!」

「・・・桐生さん」

「どうも、桐生さん」


ドアを開けると
顔なじみが勢揃いで
その中には谷村も居た

ほっとしたように声を
合わせて名前を呼ぶ中
その後ろで切なげに
桐生の顔を見つめる遥がいた


「・・・遥」

「おじさん・・・」

「また俺のせいで・・・
迷惑かけちまったな」

「おじさんは、悪くないよ・・・!
でも・・・なまえさんが・・・」

「・・・なまえは必ず
連れて帰る・・・」

「うん、うん・・・!」

「心配するな、遥」

「ありがとう、おじさん・・・」


遥は涙を流しながら何度も頷くと
桐生の胸へと顔を埋めた


―――――――――――――――




「遥、やっと安心できたみてえだな」

「・・・やっと?」

「自分のせいでなまえちゃんが
攫われたってずっと
思い悩んでたみたいで・・・
僕も何回も落ち着かせようと
頑張ってたんですけどね」

「秋山さんじゃ力足らずだったんすね」

「谷村、お前俺がどれほど・・・!」


谷村の言葉に呆れる秋山は
はぁ、と大きな溜息を漏らす

桐生はソファで深く眠る
遥を見つめた


「昨日から遥ちゃん
ずっと寝てなかったんですよ
なまえちゃんのことずっと心配してました」

「なまえ・・・」

「そのなまえって人
桐生さんたちとどういう関係なんすか?」


谷村は膝に肘をついて
桐生に顔を向けると
桐生は優しい顔で呟く




「俺の・・・家族だ」




「家族、ですか・・・」

「・・・桐生」


伊達は静かに煙草をふかすと
ふぅ、と小さく息を吐いた


「なんなら、尚更
守ってやんなきゃな」

「伊達さん・・・」

「お前の唯一の、家族だ
遥も、なまえも・・・」

「・・・あぁ、分かってる」


桐生は険しく顔を顰めると
力強く返事をする



「ただ桐生さんは一人で
来いと言われてるんですよね・・・
僕らにできることといえば・・・」

「俺はこれでも警察の犬
番犬ぐらいお手の物ですよ」

「はぁ・・・その言い方はよせ
まぁ谷村の言う通り、遥の身は守る」

「・・・遥のこと、よろしく頼む・・・」


そう一言、呟くと
桐生は三人に深く頭を下げる



「任せてください」

「桐生さん、気をつけて・・・」

「・・・あぁ」



約束までの僅かな時間を
桐生は遥の傍で
なまえのことを考えていた








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