階段を下りた路地裏で
男達が5人程彷徨いていた




「おい、そこのお前」

「・・・あら、お客さん?」

「・・・何言ってんだ?」

「いやぁ、すぐここの上
うちの店なんだよね」

「そんなことは聞いてねえよ
それよりお前、こいつを知らないか」



平然を装い要件を聞く秋山に
男達は一枚の写真を
目の前へと出して見せた

それは遥の写真だった



「・・・あら、この子」

「知ってんのか?」

「いやいや今頃この子を
知らない人の方が少ないでしょ〜よ
テレビにも出てる人気アイドルだよ?」

「そんなことはどうでもいい
こいつがここらに現れたと聞いたんだ
お前・・・何か知らないのか」

「んー、さっき見たといえば見たかな〜
でもおたく・・・この子捕まえて
一体どうするつもり・・・?」

「お前には関係ねえだろう」

「いやぁ関係ないよ、でもねぇ
あんたらみたいな怖い人達が
この辺うろつかれると
困るんだよね、客数減っちゃうし」

「・・・あぁ?お前、喧嘩売ってんのか?」



男達は些細な言葉が
頭にきたのか秋山を
囲むように近づいてくる



「・・・あんたら、ヤクザでしょ
どこの組だかなんだか知らないけど
ここは紛れもなく東城会のシマ。

この辺うろついてると
騒ぎにでもなっちゃうんじゃないの・・・?」

「やけに詳しいみてえだな・・・
てめえも同じタチか」

「え?俺は違うよ?ただの金貸し。
だからここで俺が暴れようが
何しようが俺の勝手、ってワケ
東城会とも極道とも関係なんてない」


男達はあぁ?と形相を変えると
秋山の胸ぐらをシャツごと掴む
頭に血が昇り苛々しているのが分かる


「つまり・・・お前はここで俺らに
叩き潰されたっていいってことだな?」

「違う違う、間違ってるよ〜
・・・俺がお前ら叩き潰すの」



瞬間胸ぐらを掴んでいる男に
脚を上げ腹ごと蹴り倒すと
シャツからその手は離れた

背後を囲んだ男が勢いよく
鉄パイプを振りかざす
その動きを読んだ秋山は
素早くしゃがみ込み
足元に蹴りを入れた

男が足元を崩し転倒すると
同時に振り翳した鉄パイプは
周りの男へと勢いよく当たる


「ぐっ・・・お前、一体なんなんだ・・・!」

「だから、ただの金貸しだよ」





「がはっ・・・!!」


難なく男5人を仕留めると
秋山は更にまだ息のある一人を
躊躇なく追い詰めた


「澤村遥を狙う理由はなんだ」

「へっ、お前に・・・そんなこと言って
なんの意味があるんだよ・・・」

「ここは俺らの街だ
変な騒ぎ起こされちゃ困る

・・・ん・・・?」


秋山は男の襟に目を凝らす
そこにはあの時、東城会を襲った
「上野誠和会」の紋章があった


「・・・上野、誠和会・・・
まさか・・・でもあの時確かに・・・」

「クククッ・・・潰れたはず、だって?
俺らの時代はまだまだこれからなんだよ・・・」

「どういうことだ・・・」

「俺らの望みはただ一つ
親殺しの復讐だ・・・」

「・・・もしかして、お前ら・・・
なまえちゃんをも人質に・・・?」

「あ、そうそう・・・
ひとついいこと教えてやるよ・・・

組員数はな、あの頃より
遥かに多くなってる・・・
ここで争った形跡を知られれば
この復讐とは関係のない
お前だって・・・ククッ」

「・・・そんなことより!
なまえちゃんが何処に
居るのか答えろ!おい!」


男の意識が飛び
目を閉じたその直後

臭いを嗅ぎつけた
上野誠和会の組員が
ぞろぞろと秋山へと近づいてくる


「おいおい〜おっさん
なに俺達の仲間に
手出しちゃってんだ?
俺達の狙いを阻むってんなら
容赦はしねえぞ」

「・・・くっ、答えを聞き出すには
お前ら全員倒せってか・・・?」

「何言ってんだてめえ!
いっぺん死んでこいやあ!!」

「流石にこの数だと
俺もあんまり自信がないな〜・・・」


あまりの人数の多さに
冷や汗をかいて珍しく
焦りを見せる秋山の脳裏には
上野誠和会の復讐の
構図が次々と浮かび上がっていた


「桐生さん・・・
またややこしい相手
敵にまわしちゃって・・・

あ、いつもの事か・・・」


気の抜けたような顔を
きりっと整えて腕を構えると
一斉に男達は襲いかかった









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