いつの日だったか
あなたはこう言っていたね

守るべきものは
自分を支えてくれている人だ、と


「お願い・・・だから
もう大切なもの、無くさないで」


遠のく景色の中覚えていたのは
涙を流す龍の顔だけ

その日の夜空には
数え切れない星が満開だった





――――――――――――――





「なまえさん!!」

「遥ちゃん、お疲れ様」

「ごめんなさい
打ち合わせに時間がかかって・・・
かなり待ってたんじゃ・・・」

「いいの、いいの!
それより美味しいものでも食べにいこ!」

「・・・なまえさん、優しいんですね」

「あたりまえでしょ!」



桐生が福岡にいる間
大阪でアイドルとして
花を咲かせる遥

私が大阪に移り住んだのは
遥ちゃんのことを心配する
桐生さんの願いからだった




『遥ちゃんが心配?
それなら自分で行けばいいじゃないですか
そのほうが、遥ちゃんだって嬉・・・』

『それじゃ駄目だ
遥の為にも、俺の為にもならない』

『・・・それじゃあ私が行きます』

『お前、何言って・・・』

『桐生さんが行かないなら
私が行くって言ってるんです』

『いや・・・でも』

『でも、じゃない
遥ちゃんは、私が守ります』


ほとんど話を強引に持っていった
私の身勝手な行動だったけれど

桐生さんが心配しているから
仕方なく、なんてわけではない


遥ちゃんと知り合えた私も
彼女の諸事情を知った上で
守ってあげたいと思ったからだ



「・・・なまえさん?
どうかしたんですか」

「・・・あ!ごめんごめん
ちょっと考え事をね・・・」

「なまえさんらしくないですよ
いつも明るくて優しいのに
そんな切ない顔するなんて」

「え?そんな顔してた?」

「はい、してました」

「ごめんね、気にしないで!
さ、早くご飯食べに行こう!」



遥となまえは地下鉄の駅へと
向かい歩いた



そんな中なまえは
なにやら後をつけてくる
ような気配を感じ足を早める



「・・・遥ちゃん、ちょっと走るよ」

「・・・え?」



なまえは遥の手を握ると
駅へと駆け足で向かった

駅に着き、改札を抜ける
しかしホームには
誰一人もいなかった


「ど、どういう・・・こと?」

「なまえさん・・・」


改札からコツコツと足音がする
続々とスーツを来た男達が
二人を目掛けてきていた



「・・・あなたたち、一体なんなの」

「悪いが、その娘を渡してもらう」

「・・・無理、と言ったら?」

「お前も一緒に来てもらうだけだ」


じりじりと攻め寄る男たちから
なまえは遥を背後へ隠し
ホームの端まで後退る


「・・・なまえさん、どうしよう」

「こいつら、遥ちゃんが目当てなのよ」

「えっ・・・」

「ここは私が時間を稼ぐから
あの電車が出る直前に
乗り込んで逃げて・・・」

「で、でも・・・」

「私は大丈夫だから、ね?」


なまえは満面の笑みを見せると
遥は小さく頷いた



「それで、お前の答えはどうなんだ・・・」

「ちょっと待って
この子を渡そうかどうか悩んでるの」

「ほう、だが早くしてくれないか
こっちもゆっくりしてられる時間は無いんだ」

「・・・」




発車のアナウンスが流れる

電車のドアが閉まる直前に
遥は振り切って電車に乗り込んだ

男たちは慌てて遥の後を追うが
なまえが前に塞がり足止めをする



「・・・お前・・・」

「ごめん、やっぱり渡すの無理だった」

「お前、自分がどうなるか
分かってるんだろうな・・・」

「わかってる
・・・でもあの子を守るのが
桐生さんと私の、願いだから・・・」

「・・・桐生、だと」


男は微かに笑うと
手下をなまえの背後に
まわして捕まえ
大きく胸で笑った



「クククッ・・・!そうか
それじゃあ、お前を捕まえんのが
一番手っ取り早いみてぇだな」

「!・・・どういうことよ」

「あのガキが狙いだったが
お前でも、代用になりそうだ」

「・・・!?」

「おい、連れていけ」



なまえはこの男達が
桐生繋がりで遥を
狙っていたことを知った直後
なまえは意識を失った








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