男が目を覚ましたのは
翌日の夕方だった

とにかくやっと
目を覚ましてくれたので
私はほっと一息をつく



「やっと目が覚めましたか…」

「俺…どうしてここに……
君が、診ててくれたの……?」


か弱いこの声に私は頷く


「こんなみすぼらしい格好の
ホームレスの俺を、わざわざ?」

「え、えっと…それはともかく
このままだと危険だと思ったので…」

「……そうか、君が……ねぇ…
人生まだまだ捨てたもんじゃないね
こんな可愛い子に救われるなんて…」


男は小さくニコッと笑う
その笑顔にこれまで尽くした
努力が全て報われた気がした


「ありがとう…
まだ言ってなかったね」


そんな言葉を期待してた
訳でもないのだが
私はどこか感極まってしまう



「お、お腹空いてませんっ?
卵粥でも作るので良かったら…」


瞳に溢れたものを誤魔化す為に
私は慌ててキッチンへと向かう

卵粥を作ろうと冷蔵庫を開けるが
丁度卵を切らしているのを
すっかりと忘れていた


「ちょっとそこのコンビニまで
卵買ってくるので…待っててください!」

「そんなことまでしなくても良いよ…
助けてくれただけで充分なのに」

「いいんです、行ってきますね!」



そうして私は男を部屋に残し
そのままコンビニへと向かった




そう、部屋に残していったのが
私の大きな失敗だった




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