「先輩・・!!」
少し息を切らして入ってきた彼に驚く私をよそに白石と謙也は他のやつらも呼んでくると言って出て行ってしまった。
ぱたんと扉が閉まる音がして、保健室には私と財前くんの二人きり。
しかも財前くんはなぜか黙ったままうつむいている。
「・・財前くん?」
ぴくっと反応はあるんだけれど返事をしてくれない。
気まずい沈黙がながれるなか、財前くんが先輩、と小さな声でつぶやいた。
「うん」
言葉を発してくれた事に一先ず安堵しつつ返事を返す。
「・・・体調、悪かったんすか、」
眉をひそめたままそう問いかける財前くんは、私が倒れたことを自分のせいだと思ってくれているのかな。
そうだったらなんだか嬉しくてへらあっと笑うと何変な顔しとるん、といつも通りの鋭いつっこみをいただいてしまった。
「体調わるかったわけじゃないよ」
「嘘つかんといてください」
「嘘じゃないよ、目の前で倒れたりしてごめんね。びっくりしたでしょ」
「笑いごとちゃうでしょ」
「財前くんに心配してもらえるなんて贅沢やね」
「いつ心配したなんていいましたっけ」
「あはは、もういつもどおりやね」
ふざけた口調で言ったのに、財前くんは納得していないようで言葉を続けようとする。
「自己管理ができてなかっただけだから本当に大丈夫」
「・・・それなら、ええですけど、」
「うん」
「避けとったんは、なんでですか、先輩俺のこと嫌い、っすか」
ぽつりぽつりと財前くんが呟く。
きっと避けていたのは気づいてもその理由は考えてもわからなかったんだろう。
それはもういいじゃん!なんて言えないしごめんも違う気がして、でもどうやって答えたらいいのかもわからず黙ってしまう。
「・・・すみません変なこと聞いて、」
「ちが、財前くんのこと嫌いなわけないよ!!」
「、それほんまに?」
「こんなんで嘘なんかつかないよ。避けてたのはごめん色々あって、でも、財前くんが嫌いとかそんなんは絶対ないから!」
嫌いで避けてたわけじゃないってことだけは何故か伝えなきゃいけない気がして、そう思ったら知らないうちにぺらぺらとしゃべってしまっていた。
しゃべったもののなんだか恥ずかしくて財前くんの方を向けないでいると、ふはっ、と吹き出したように財前くんが笑う。
「もー!なんで笑うの!」
「いや、なんでもないっすわ」
「財前くんつぼおかしいよ」
そんな風にくすくすと笑う財前くんに少しどきっとしたのは仕方ないことだと思う。財前くん、イケメンやし。
「先輩」
「ん?」
「次から俺と飯食いません?」
「へ」
そんな爆弾発言にくちをぱくぱくさせているとタイミングがいいのか悪いのかそこで謙也が入ってきてその話はなあなあになってしまった。
・・・どういうこと!財前くん!!
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