珍しく凌統がお茶に誘ってくれた。
前に可愛い、と言ってくれた服を着て凌統を待った。
暖かな、青空の美しい日だ。



「ごめんごめん、待った?」
「ううん、誘ってくれてありがとう!もう楽しみで楽しみで…!」
「はいはい、すぐに行きましょうね、お姫様」
「ちょっと、何呆れてんの?!」
「いいから、行くよ」



そう言って凌統は私の手を握った。
私より大きくて、硬い手だと思った。
凌統の一つに結んだ髪がふわふわ揺れている。
嬉しくなって手を握り返すと凌統は振り返って微笑んだ。



「本当にすきだね、その桃まん」
「ん、すき」



凌統は肘を付きながら私の食べる姿をじーっと見つめる。
気にせず大好きな桃まんを頬張りながら凌統を見返した。
凌統は時折お茶を飲んでいた。



「ここ」
「ん?」
「ついてる」



そっと、長い指が唇すれすれを掠める。
餡を取ってそのまま口に運ぶ。
その動作に思わず顔が赤くなった。
凌統はそれを見て笑う。
狡い、凌統だけ余裕だ。



暫くして店を出てふらふらと手を繋ぎながら歩く。
綺麗な小物を見て感嘆の息を漏らせば凌統はまた微笑んだ。
それが嬉しくて私の心は弾んだ。



「目、瞑って」
「なあに?」
「いいから」



凌統に言われた通りそっと目を瞑る。
優しく髪を梳かれ何かが頭にとまる。
目を開けようとすると凌統が目を手で覆ってしまう。



「凌統、」
「もうちょっと」



そして唇に柔らかな感触。
驚いて目を開ければあまりにも近い凌統の顔に更に驚いた。




「凌統っ!」
「全部、」
「っ…」
「全部、あげる」


ふわりと風が吹いて、頭についた、簪がしゃらりと音を立てる。
凌統の細められた瞳から目が離せない。
今までに見たことのない、愛しむような瞳だった。
時が止まってしまったかのようにただただお互い見つめ合って、ゆっくり重なる影に目を閉じた。









20120310


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