しん、と静まりかえる夜。
柔らかく触れた指先は私の髪を攫っていく。
触れ合った肩から伝わる体温が心地よかった。
「明日は地球に行く」
「そっかあ…地球、行ったことないなあ」
「そうだったか?」
「うん、いっつも船内から見てるだけ」
どこまでも深く青い地球。
宝石みたいな澄んだ、どの惑星よりも美しい星だと思った。
誰もが自分のものにしたいと思う気持ちもよくわかる。
今も窓から見える地球は美しい。
「でもま、地球なんて遠くから見てるのが一番綺麗さ」
「どうして?」
「ま、その内わかるさ」
ふ、と優しく笑って阿伏兎は頬に口付けを落とす。
くすぐったくて笑えばまた一つ。
頬、鼻、瞼、おでこ、と口付けを落とし、最後は唇を啄んで、そっと下唇を噛まれた。
彼の癖のある髪に指を絡めて、もっと、と強請ればまた笑って何度も口付けを交わす。
「幸せ」
「ん、」
二人で笑って抱きしめ合う。
彼の厚い胸と、私の柔い胸がぶつかる。
素肌と素肌が気持ちいい。
首筋に、耳に柔らかな口付けが降り注ぐ。
どくん、どくん、と自分のものだけでない心臓の音が聞こえた。
「地球なんて要らないさ」
「そうだね」
「…お前さんさえ居ればそれでいいさ」
20120309